ところで、「φ」は、「ふぁい」「ぱい」「まる」などと発音される、直径を示す記号ですが、図面にこの記号を用いるのには理由があります。
図面は、誰が見ても同じように解釈できなくてはなりません。
以下に示す図5の場合、1つの図面から異なる2つの形状がイメージできてしまいます。
1つは「四角形」、もう1つは「円筒形」です(図6)。まるで違いますよね。この図面では、誰もが同じように解釈することができません。
もしも円筒形を示したいのであれば、図7のように図面を記述します(「15」を直径とした場合)。
つまり、図としては四角形にしか見えない場合、φを付けてそこが円であることを主張します。また、記号を用いるのはJIS規格で決められている「図面のルール」の1つなのです。そして、加工のミスを防ぐためには、図面を描く人も読む人も図面のルールを同じように理解していることが大事なのです。
ルールといえば、記号もさることながら、図形を表す「線」の役割も重要です。線の基本は4種類。使い分けはそれほど難しくないので、覚えておきましょう(表1)。
誤解を避けるために、外形線以外は全て細線を用いるのがルールです。これらを使い分けることで、複雑な形状も2次元図面で表すことができるのです。
ところで現実的な話、設計者全員が絵心や美的センスを備えているとは限りません。設計の現場で下絵を描く人の中には、自分の絵が少々難解でも製図者とCADが何とかしてくれると思っている方がいます。ですので、実務の中では、線の区別なく描かれた個性的な下絵でも、設計意図を正しく理解して図面化してくれる製図者が喜ばれます。人任せのようですが、「機械屋でCAD使うのなら大体理解できるでしょ」と思って、製図者の皆さんのことを頼りにしているのです。
確かに、下絵は主に図形で示されているので大きな誤解はしませんが、時に難解な記述が混じっていることもあります。そのような場合、製図者は推理をして、考えを巡らせながら作業を進め、いったん図面を描き上げたら設計者の意図に沿っているか確認してもらいます。
面倒な話のように聞こえますが、こういう経験を重ねていくことで図面を読み描きする力が鍛えられていくのです。
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