太陽による地球磁場への影響を観測する「宇宙天気予報」の実用化が情報通信研究機構(NICT)によって進められている。毎日Webサイトで公開されるデータは、人工衛星や通信を守る貴重な情報源となっている。
情報通信研究機構(NICT)が毎日発表している「宇宙天気予報」をご存じだろうか。
「天気」と言っても雨、雪、台風などの話ではない。太陽から発せられる「太陽風」やそれに伴う「磁気嵐」を観測・予報するのが宇宙天気予報だ。アメリカでは地震や津波と同様に注視すべきリスクとして、「米国戦略的国家危機評価」の1つに追加しようという動きも進んでいる。
情報通信研究機構(NICT)は2015年8月26日、記者説明会を行い「宇宙天気予報」の最新動向について解説した。同会にはNICT 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室の石井守氏が登壇し、宇宙天気予報の重要性を語った。
太陽は爆発の際、「太陽風』と呼ばれる電気を帯びたガスを発生させる。地球は磁気圏でその太陽風を防いでいるが、まれに防ぎきれないことがあり、その際には磁場や電離圏が乱れて「磁気嵐」が発生する。
この磁気嵐は宇宙ステーションや人工衛星の制御に影響を及ぼす他、地上でのGPS利用や電力網の障害につながる可能性すらある。「これらを回避するべく、太陽の動きを観測し、太陽風の動向を予測するのが宇宙天気予報の役割」(石井氏)。
記録上、最も大きな宇宙天気現象として知られているのは1859年に発生した「キャリントン・イベント」だ。電信線の帯電によるオフィス発火や、夜でもオーロラの光で新聞が読めたなどの記録が残っているという。現在でもキャリントン級の爆発が起こる可能性はあり、発生すると東日本大震災を大きく上回る経済損失が世界規模で発生する恐れがある。
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