NICTでは1988年より宇宙天気予報を発信しており、衛星運用機関や航空関係機関、電力事業者などが情報を利用している。予報は、NICT本部(東京都・小金井市)にある「太陽風観測データ受信システム」と2014年7月に新設した山川電波観測施設(鹿児島県指宿市)にある「太陽電波望遠鏡」からの情報を元に行われている。また、2015年2月に次期太陽風観測探査機「DSCOVR(ディスカバー)」の打ち上げが完了しており、現在運用している探査機「ACE(エース)」からの移行が2015年度中に完了する予定だという。
宇宙天気予報は近年、その重要性が広まっており、例として航空機運用への利用義務化が検討されていると石井氏は解説する。北極航路を利用する航空機は短波通信を利用しているが、その際に宇宙天気現象が発生してしまうと短波通信が途切れ、外界との通信ができなくなる可能性がある。それを回避すべく、影響の激しい地域を避けて通るなどの運用が検討されているという。その他にも、衛星運用機関が宇宙天気を参照して運用スケジュールを検討する、通信機関が宇宙天気を参照して周波数を切り替えるなど、宇宙天気は欠かせない情報となりつつあると現状を説明した。
宇宙天気の観測は広い範囲を扱うため、国際協力が欠かせない。最も古くからある組織は、国際科学会議(ICSU)内にある国際宇宙環境サービス(ISES)で、アメリカ、ロシア、イギリスなど17カ国が参加しており、連携して予報を進めているという。また、国内でもNICTが中心となり、宇宙天気予報システム向上への新しい取り組みの研究が全国的にはじまっている。
石井氏は「宇宙天気予報を活用する機関はまだ少なく、原因不明の通信切断が実は太陽風の影響だった、と後から分かることも多い。これから大学や専門家などとも情報を交えながら普及、研究を進めていきたい」と今後の目標を話した。
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