乾電池1本で10年駆動も、日本発の無線規格「Wi-SUN」5分でわかる最新キーワード解説

日本発の無線通信規格「Wi-SUN」は東京電力などがスマートメーターに採用するなど、生活に身近な技術となりそうです。このWi-SUNとは、どんなものなのでしょうか。

» 2015年06月10日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

「Wi-SUN」とは?

 「Wi-SUN」とは「Wireless Smart Utility Network」の略語で、最大1キロメートル弱の距離で相互通信を行える省電力無線通信規格。もともとはガスの自動検針情報の取得を無線経由で行う研究がきっかけだったが、東京電力の電力量計自動検針システムのほうが早く採用を決めた。

 規格の標準化を主導してきたのは情報通信研究機構(NICT)で、NICTでは既にWi-SUNを利用した多数の実証実験を行っている。NICTが開発したWi-SUN準拠無線機の数例を図1に示す。Wi-SUNの特長は、用途にもよるが乾電池で10年間の駆動が可能という抜群の省電力性とノイズに強い通信品質を持ちながら、他の近距離無線規格が数メートルから数十メートル程度の通信可能距離なのに対し、1キロメートル弱の長距離通信が可能な点だ。このような特長を生かして、スマートメーターやHEMSへの適用が期待されており、遠からず各家庭に普及を始めるものと思われる。

photo 図1 Wi-SUNモジュールを搭載した無線機の外観例。左上から時計回りに温湿度センサー内蔵屋外センサーボックス、乾電池駆動のWi-SUN無線機、USB端子付きWi-SUN無線機、ガスのスマートメーターに取り付けたWi-SUN無線機

「Wi-SUN」はWi-Fiとどう違う?

 Wi-SUNはWi-Fiと関係がありそうな名前ではある。ともに、小電力無線通信仕様の認証を行うアライアンス、またはその認証規格の名称である点は同じでも、他にそれほど共通点はない。認証とは、製品の規格準拠認証、および相互接続性のお墨付きを与えることを意味する。Wi-Fiアライアンスはその前身となる組織が1999年に設立された機関で、IEEE 802.11規格に基づく製品の相互接続性を確保するための認証を行ってきた。一方、Wi-SUNアライアンスは2012年設立の新しい機関で、認証しているのはIEEE 802.15.4gに基づく製品であり、Wi-Fiが対象とする無線LAN製品ではない。

 IEEE802.15.4gは、先行している近距離無線通信規格の「ZigBee」がベースにしているIEEE802.15.4の物理層を変更した拡張規格で、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張などを施し、よりスマートメーターに利用しやすくしたものだ。もともとNICTが国内ガス会社やメーター製造企業と連携してIEEEに提案し、標準化をリードしたいきさつがあり、日本発の国際標準といえる。これに伴い、1つレイヤーが上のMAC層の仕様もIEEE802.15.4eとして標準化された。

 Wi-SUN規格は、IEEE802.15.4g規格を最下層(レイヤー1)のプロトコルのベースとすることが決まりごとで、その上のプロトコルをどんな規格にするかは、アプリケーションに応じて決めていく。このようにして決められたプロトコルのセット(プロトコルスタック)を「Wi-SUNプロファイル」と言う。

 Wi-SUNアライアンスの主要な仕事は、アプリケーションに応じたプロファイルを作成し、認証・相互接続性試験を行うことだ。後述するECHONET Liteというアプリケーションを利用する場合、図2右端のようなプロファイルを規定している。別のアプリケーションなら、図2に例として示すようにプロファイルを適宜作成して構成することになる。

photo 図2 Wi-SUNプロファイルの例
  • 920MHz帯を利用するIEEE802.15.4g

 IEEE802.15.4gが使う周波数帯は国内では920MHz帯が主流。これは2012年に地上アナログ放送の停波で空いたところだ。この周波数帯が無線局免許がいらない特定小電力無線通信用に使えるようになったので、さまざまな近距離無線通信への利用が試みられている。この周波数帯は無線LANで主流の2.4GHz帯に比べ、電波が障害物を回り込みやすいという特長があるうえ、よく無線LANに干渉する電子レンジなどの家電製品等があっても影響を受けにくく、家庭やオフィスなどで利用するのに都合がよい。また同様に特定小電力無線に使える400MHz帯に比べて伝送速度が速いという利点もある。

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