自動運転シンポジウムの主役はグーグル、自動車メーカーはなぜ発表を控えたのかAutomated Vehicleシンポジウム2015リポート(前編)(4/5 ページ)

» 2015年07月29日 10時00分 公開
[桃田健史MONOist]

Google Xが最重要視する「安全性の担保」

 シンポジウム2日目のキーノートスピーチには、Googleで自動運転技術の開発を手掛けるGoogle Xが登場した。登壇したのは、Googleの自動運転プログラムでディレクターを務めるChris Urmson(クリス・ウルムソン)氏だ。

 ウルムソン氏は、DARPAのグランドチャレンジやアーバンチャレンジでカーネギーメロン大学チームを主導し、その実績をGoogleに評価され現在のポジションを得た。米国一般メディアにも度々登場しすっかり有名人となっている。しかしGoogle Xが公の場で自動運転について発表することはほとんどない。このため、今回のシンポジウム参加者たちは、ウルムソン氏の一挙手一投足を見逃すまいという雰囲気だった。

 その講演内容だが、合計30分間の中盤までは、Googleが自動運転を行う社会的な意義、ウルムソン氏が関わったDARPAのグランドチャレンジ/アーバンチャレンジに対する振り返り、そして2010年から参画しているGoogle Xで行っている自動運転技術開発の流れを紹介した。

 そして講演の後半になり、注目を集める独自開発の小型自動運転車についての報告が始まった。同車両のイラストを提示した後に表示したスライドは電源方式についてだった。二次電池からDC-DCコンバータを通じて得た電力が供給される「Power Bus1」と「Power Bus2」という2つの電力系統に対して、それぞれバックアップの二次電池を持つシステムだという。さらに、運転操作を行うステアリングシステムの写真と実験風景の動画を示した上で、もしシステムが停止したとしても、バックアップシステムが作動して運転操作を続けられる様子を示した。

 つまり、Google Xとして最重要視しているのは「安全性の担保である」と強調したのだ。

 その上で、車両に装着するセンサーとして、短距離・中距離・長距離に対応するライダーやレーダーの使用を示し、走行中のデータ収集の様子を動画で公開した。2014年の同シンポジウムでも、Google Xの講演で今回と同じようなデータ関連の動画を公開したが、自車の周辺状況の表現がよりカラフルで詳細になった印象を受けた。

Googleが独自開発した小型自動運転車に搭載するライダーなどのセンサーによる検知結果 Googleが独自開発した小型自動運転車に搭載するライダーなどのセンサーによる検知結果(クリックで拡大)

 また、小型自動運転車のプロトタイプの製造に関しても触れ、「ラッシュのファクトリーで行っている」と説明した。このラッシュとは、フォードがハイパフォーマンス車およびNASCARなどの自動車レース分野の開発を委託している、ジャック・ラッシュ氏が率いる企業のことだ。同社のミシガン州内の工場で製造され、最終組み立て後は一般的な量産車と同様にテストコースでの走行試験を行っていると説明。示された動画では、コンクリート路面上に複数の突起物がある状況での“乗り心地テスト”の実施風景が公開された。

 また、Googleが独自に設定したテストコースでの走行風景の動画もあった。それは、DARPAアーバンチャレンジを思い起こすような市街地を再現したものだった。信号機のある交差点で、普通のクルマが走行し、Google社員向けの自転車が横断歩道を移動し、その中を小型自動運転車が通過していく。そして「今回が初公開だ」として、一般公道での夜間走行の模様も示された。

Googleが独自に設定したテストコースでの走行風景 Googleが独自に設定したテストコースでの走行風景(クリックで拡大)
一般公道における夜間走行の様子 一般公道における夜間走行の様子(クリックで拡大)

 この他、歩行者検知技術についても紹介した。ライダーによる3次元画像とは異なり、小型自動運転車の前方で人が身体を動かした際の、より詳細な動きをデータとして図表上に表現した。

 ウルムソン氏の講演では、シンポジウム参加者に対する質疑応答の時間は設定されていなかった。このため、ウルムソン氏の周りは名刺交換を希望する人々で大混雑となった。

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