いかに速く安定して目標値に到達させるか無償ソフトで技術計算しよう【制御工学応用編】(3)(2/2 ページ)

» 2015年07月23日 10時00分 公開
[伊藤孝宏MONOist]
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 次に、入力した結果から回帰式を作成します。データ→データ分析とすると、分析ツールの一覧が表示されるので、回帰分析を選択してOKをクリックすると、図3に示す回帰分析の条件設定画面が表示されます。

図3:回帰分析の条件を設定

 ここで、入力Y範囲にTr以下のセル、入力X範囲にKp,ki,kdの組み合わせを選択し、結果の出力先のセルを指定して、OKをクリックすると、図4に示すような回帰分析結果が得られます。

図4:回帰分析結果から回帰式を作成

 このうち、切片が定数項、X値1がkpの、X値2がkiの、X値3がkdの回帰係数となります。以上をY範囲をAmax以下のセル、Ts以下のセルとして繰り返すと、Tr、Amax、Tsの回帰係数が得られます。図4に示すように、それぞれの回帰係数とkp,ki,kdの値を組み合わせて回帰式を作成します。今回はソルバーで最適解を探索させるために、セルD7~J7にもコピーして回帰式を用意します。

 回帰式が用意できたら、ソルバーで最適解を探索させます。データ→ソルバーとクリックすると、図5に示すソルバーの設定画面が表示されます。

図5:ソルバーの条件設定

 目的セルの設定欄で、Tr欄のH7セルを選択し、目標値は最小値のラジオボタンをクリックして選択します。変数セルの変更欄は、kp,ki,kd欄のセル範囲D7〜F7を選択します。次に制約条件を設定します。追加ボタンをクリックし、表示される画面で、図5のように順に設定します。>=5、<=20は、kp,ki,kdの設定範囲です。H7>=0.1は、立上り時間が0とか負といった非現実的な値となるのを防ぐためです。I7<=1.1は行過ぎ量の目標条件で、J7<=3は整定時間の目標条件です。

 以上の設定を行い、解決ボタンをクリックすると、図6に示すように、最適解の組み合わせと、予測結果が得られます。

図6:セルD7〜F7に最適解が表示される

 最適な組み合わせとして、kp=5、ki=14.6、kd=5が得られたので、確認のため、この条件でex511.mを動作させると、図7に示す結果が得られます。

図7:最適解を設定 kp=5、ki=14.6、kd=5

 図8に【制御工学基礎編(1)】で紹介した適当に設定した結果を参考までに示します。

図8:当初の設定 kp=10、ki=10、kd=10

 最適な組み合わせでは、立ち上り時間は、1.5秒から0.7秒に短縮されています。また、整定時間も3.5秒から1.5秒に短縮され、速応性・安定性ともに改善されていることが分かります。


 制御工学編は今回で終了です。企画の都合で制御工学の一部しか紹介できませんでしたが、FreeMatにより結果を可視化することで、理解しやすくなることを実感していただけたら幸いです。

参考文献

  • 「MATLABハンドブック」小林一行著、秀和システム刊
  • 「はじめてのFreeMat」赤間世紀著、工学社刊
  • 「制御工学」豊橋技術科学大学制御工学教育連携プロジェクト著、実教出版刊

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筆者紹介

伊藤孝宏(いとう・たかひろ)

1960年生。小型モーターメーカーのエンジニア。博士(工学)。専門は流体工学、音・振動工学。現在は、LabVIEWを使って、音不良の計測・診断ソフト、特性自動検査装置などの開発を行っている。



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