ママさん設計者がやさしく教える「部品図の描き方超入門」まずは自分の手で描いてみる(3/3 ページ)

» 2015年05月28日 10時00分 公開
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「寸法許容差」と「寸法公差」

 部品図の絵が描けたら、次は各部に寸法を入れていきます。このとき、全ての寸法に何らかの許容差を設けてあげる必要があるのです。なぜなら、機械精度や材料条件の変動といった要因で、仕上がりの寸法にバラつきが生じるのが普通だからです。

 そこで、実用に支障をきたさない範囲で、実際の寸法として許容される「最大値」と「最小値」を決めてあげるのです。これを「寸法許容差」といい、最大値を「上の寸法許容差」、最小値を「下の寸法許容差」といいます。そして、この最大値と最小値の差が「寸法公差」となります。一般的に、加工者は寸法許容差の中央値を狙って加工します。ですから、“加工者に仕上がり寸法の狙い目を伝える数字 = 寸法許容差”と考えればよいですね。

 しかし、全ての寸法にいちいち許容差を記入していたら図面が数字だらけで見づらくなってしまいます。そこで、「この寸法には特別な許容差を指定したい」という箇所以外は、「長さ寸法および角度寸法に対する普通公差(JIS B 0405)」を適用することを図面に明記します。一般的には、あらかじめ図面シートに一般公差表を記載して用いることが多いです。

図面シートに記載されている「一般公差表」の例 図3 図面シートに記載されている「一般公差表」

 図3の図面シートの例では、「個別に公差指示がない箇所は、一般公差B級(中級)を適用しますよ」と示しています。加工者はここを見て許容差を判断しています。

 さきほど「公差とは、最大許容値と最小許容値の差ですよ」と紹介しました。では、もしも最大・最小許容値の指示がなく、ただ「0.2の公差で作ってね」と指示がきた場合、どのようなことが起こるでしょうか?

 基準寸法(図面上の記載寸法)を100mmとした場合、

  1. 100mm ±0.1(公差0.2) = 最小許容値99.9から最大許容値100.1が合格品
  2. 100mm +0.2/0(公差0.2) = 最小許容値100から最大許容値100.2が合格品
  3. 100mm 0/-0.2(公差0.2) = 最小許容値99.8から最大許容値100が合格品

という3つのパターンが考えられます。

 3つとも公差は0.2なのに、合否判定の基準が変わっています。公差は数字だけでなく、「基準寸法前後のどこからどこまでを許容範囲にするのか」が肝心なのです。そのために、設計意図のおさらいと、関連するその他の部品の許容差の確認も不可欠です。

 やや駆け足気味な内容になってしまいましたが、「図面を描くことは、決して難しいことではない」ということが伝わりましたでしょうか? それではまとめとして、今回ここで取り上げた第三角法と寸法許容差を意識しながら、図面を“手描き”してみましょう!

 第三角法のコツをつかむには、比較的分かりやすい形状の身の回りのものをモデルに選んで、先ほどの図1を参考に投影図のスケッチを描いていきます。

投影図のスケッチ 図4 投影図のスケッチを描く。モデルを第三角法で投影すると、3面の形状はこのようになる。まず、3面のスケッチを書き出し、次いで寸法を計測する

 次に、直尺やノギスを使って必要な寸法を測り出していきます(図5図7)。

必要な寸法を測る(1) 図5 必要な寸法を測る(1) ※画像クリックで拡大表示
必要な寸法を測る(2) 図6 必要な寸法を測る(2)
必要な寸法を測る(3) 図7 必要な寸法を測る(3)

 ここまでの作業を実際に図面にすると、図8のようになるはずです。穴の「2×φ10」は、「2箇所ともφ10です」ということを示しています。

図面起こしのイメージ 図8 図面起こしのイメージ

 これはまさしく現物からの図面起こしです。この際、寸法公差を意識しながら、おおよその寸法許容差を自分で決めて記入してみると、「部品図を描いているぞ」というささやかな実感を得ることができます。この作業を繰り返し行っていくと、自分が作りたいモノの図面を描くことができるようになります。ぜひ頑張って続けてみてくださいね。

 P.S. 筆記用具はスケッチブックと鉛筆がオススメです!

Profile

藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



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