トヨタ自動車の2014年度(2015年3月期)決算説明会において、同社社長の豊田章男氏は2015年度が“大きな分岐点”になるとした。この分岐点以降の成否を握るとして、豊田氏が重要視しているのが「人材育成」だ。
トヨタ自動車は2015年5月8日、東京都内で会見を開き、2014年度(2015年3月期)の決算について説明した。
会見に登壇した同社社長の豊田章男氏は、売上高が前年同期比6%増の27兆2345億円、営業利益が同20%増の2兆7505億円など過去最高となった2014年度の連結業績を振り返り、「販売店、仕入先をはじめとする関係者の尽力、そして何よりも世界中でトヨタのクルマをご愛用いただいているお客さまのおかげ。1秒単位、1円単位での生産性の向上に必死で取り組む生産現場、いいクルマづくりの思いをこめて黙々と図面に向かう開発メンバーなど、現場の1人1人の努力の積み重ねの結果でもある。彼らの頑張りにもあらためて敬意を表したい」と述べた。
その上で2015年度について、3年間の新工場凍結をはじめとする持続的成長の基盤づくりに向けた“意志ある踊り場”から、「トヨタが持続的成長に向けた歩みを着実に踏み出すのか、それとも、これまで積み重ねてきた努力にもかかわらず元に戻るのか、大きな分岐点になる」(豊田氏)とした。
具体的な施策としては、2015年4月に発足した「成長のエンジンである現場の努力をすぐに経営に反映できるマネジメント体制」(同氏)のもとで、車両のモジュール化などによって部品の共通化を進める「Toyota New Global Architecture(TNGA)」の第1号車を2015年後半から市場投入する。2020年ごろまでには世界で販売する車両の約半分をTNGA車に切り替える方針だ。また2015年度は、TNGA車の投入だけでなく、新興国向けモデルの刷新も予定している。
2018〜2019年には、3年間の新工場凍結期間に培ってきた生産技術を導入したメキシコの新工場や中国の新ラインが立ち上がる。さらに豊田氏は、「次世代環境技術の開発や、最先端のIT技術・社会インフラと協調した高度運転支援技術の実用化、ロボット事業の強化など、未来のモビリティ社会の実現に向けた新たな成長分野での投資も待ったなし」とした。
ただし、これらの施策が全て順調に進み、決算や販売台数などの数字に反映されるかどうかはまだ未知数。だからこそ、2015年度は「実践の段階であり、大きな分岐点でもある」(豊田氏)というわけだ。
豊田氏は、トヨタ自動車の経営方針について語る際には、「持続的成長」と、その軸となる「もっといいクルマづくり」と「人材育成」という3つの言葉を挙げている。今回の決算会見では、2015年4月に発足した新体制の狙いに関する質問が多かったこともあってか、コメントの多くが人材育成に関するものになった。以下に、質疑応答における同氏の回答を紹介しよう。
「成長の原単位は数多くあるが、数値に表れないものにこそこだわっていきたい。中でも人材育成は私自身の最も大切な使命だと考えている。特に、トヨタ本体の人材育成については危機感がある」
「真面目に愚直に働くことが、トヨタの特徴として挙げられることも多い。だが、これが内向きに働くこともあった。競争相手のいる外に向かって出せるようにしていかなければない。持続的成長に向けた基盤づくりによって将来を見るための体力が付いた今だからこそ、体質改善の『ReBORN(リボーン)』をやるタイミングになった」
「意志ある踊り場から実践する段階に入ったわけだが、その先はチャレンジしていくことになる。今までは、失敗するのであれば(チャレンジせずに)ゼロ打数ゼロ安打で良かった。しかしこれからは、たとえヒットを打てなくても、バッターボックスに立った人を評価したい。(実践する段階以降の)チャレンジでは、結果が出る出ないに関わらずチャレンジを続けなければならない。そのためにも、チャレンジする人材が重要だ」
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