川崎重工業は、「CO2フリー水素サプライチェーン構想」を提唱しています。水素源としては、オーストラリアで現地産の褐炭のガス化して水素を製造し、液化して日本に輸送する構想を発表しています(図4)(関連記事:壮大な夢「CO2フリー水素チェーン構想」、未利用資源と液化水素を組み合わせる)。
褐炭から水素を製造する際に発生するCO2については、オーストラリア政府とビクトリア州が、「CarbonNet」と呼ばれる二酸化炭素(CO2)の分離、回収、貯留(Carbon dioxide Capture and Storage:CCS)のためのプロジェクトを推進中で、このプロジェクトとの連携を想定しているようです※)。
※)オーストラリアのCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)への取り組みと、「Low Rank Coal Third International Industry Symposium」(2014年4月28日〜5月1日:オーストラリア)における川崎重工業の講演「Hydrogen energy supply chain based on brown coal linked with CCS」(2014年4月30日)
川崎重工業の「CO2フリー水素サプライチェーン構想」については、日本公開系特許が11件出願されており、既に特許査定を得た登録特許も6件存在しています※)。
※)特許検索方法については「コラム2」を参照
千代田化工建設は、有機ケミカルハイドライド法で液化した水素を用いた、水素貯蔵輸送システムに基づく、「水素サプライチェーン構想」を提唱しています(図5)。これまでの技術課題であった、有機物から水素を脱離させる際の反応の遅さを、白金(Pt)ナノ粒子触媒の採用で解消し、水素製造の大規模化に取り組んでいます(関連記事:水素を常温の液体に加工、大量輸送問題の解決へ)。
水素の液化輸送方法については、トルエンを水素化して、メチルシクロヘキサン(Methylcyclohexane:MCH)として水素を貯蔵して輸送することを計画しているといいます。輸送後、MCHから白金ナノ触媒を用いる脱水素化反応で、水素を回収する仕組みです(関連記事:水素を常温で「液化」、大量水素社会へつながるか)※)。
※)岡田佳巳・安井誠 「水素エネルギーの大量貯蔵輸送技術(PDF)」(2013年)
千代田化工建設の「有機ケミカルハイドライド法液化水素」に関わる特許出願状況を見てみると、日本公開系特許が12件出願されており、既に特許査定を得た登録特許も5件あります※)。
※)特許検索方法については「コラム2」を参照
水素の製造および輸送に関する技術課題が解消の方向に向かえば、各地に建設される水素ステーション建設の機運が加速化される可能性もあります。
水素インフラでは新たに東芝もグループ内の水素関連技術を融合した一貫ソリューションを展開していく方針を示しています。具体的には「地産地消」型のエネルギー供給システム事業と、「水素サプライチェーン」事業の展開に取り組む計画を示しています(図6)。
※)日本公開系特許:公開特許:通常の日本への特許出願
※)公表特許:PCT経由で日本を指定国とした特許出願
※)再公表特許:日本で国際出願しながら、日本を指定国とした特許出願
では、世界の水素ステーションの普及動向はどうなっているでしょうか。
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