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» 2015年04月21日 12時00分 公開

ZEV規制から読み解く環境対応自動車の攻防〔後編〕知財コンサルタントが教える業界事情(20)(4/5 ページ)

[菅田正夫,MONOist]

川崎重工業のCO2フリー水素サプライチェーン構想

 川崎重工業は、「CO2フリー水素サプライチェーン構想」を提唱しています。水素源としては、オーストラリアで現地産の褐炭のガス化して水素を製造し、液化して日本に輸送する構想を発表しています(図4)(関連記事:壮大な夢「CO2フリー水素チェーン構想」、未利用資源と液化水素を組み合わせる)。


photo 図4:水素サプライチェーンの全体像 出典:川崎重工業

 褐炭から水素を製造する際に発生するCO2については、オーストラリア政府とビクトリア州が、「CarbonNet」と呼ばれる二酸化炭素(CO2)の分離、回収、貯留(Carbon dioxide Capture and Storage:CCS)のためのプロジェクトを推進中で、このプロジェクトとの連携を想定しているようです※)

※)オーストラリアのCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)への取り組みと、「Low Rank Coal Third International Industry Symposium」(2014年4月28日〜5月1日:オーストラリア)における川崎重工業の講演「Hydrogen energy supply chain based on brown coal linked with CCS」(2014年4月30日)

 川崎重工業の「CO2フリー水素サプライチェーン構想」については、日本公開系特許が11件出願されており、既に特許査定を得た登録特許も6件存在しています※)

※)特許検索方法については「コラム2」を参照

千代田化工建設:水素サプライチェーン構想

 千代田化工建設は、有機ケミカルハイドライド法で液化した水素を用いた、水素貯蔵輸送システムに基づく、「水素サプライチェーン構想」を提唱しています(図5)。これまでの技術課題であった、有機物から水素を脱離させる際の反応の遅さを、白金(Pt)ナノ粒子触媒の採用で解消し、水素製造の大規模化に取り組んでいます(関連記事:水素を常温の液体に加工、大量輸送問題の解決へ)。

photo 図5:水素サプライチェーン構想の全体像 適地で水素を製造し、液化して日本まで運ぶ 出典:千代田化工建設

 水素の液化輸送方法については、トルエンを水素化して、メチルシクロヘキサン(Methylcyclohexane:MCH)として水素を貯蔵して輸送することを計画しているといいます。輸送後、MCHから白金ナノ触媒を用いる脱水素化反応で、水素を回収する仕組みです(関連記事:水素を常温で「液化」、大量水素社会へつながるか※)

※)岡田佳巳・安井誠 「水素エネルギーの大量貯蔵輸送技術(PDF)」(2013年)

 千代田化工建設の「有機ケミカルハイドライド法液化水素」に関わる特許出願状況を見てみると、日本公開系特許が12件出願されており、既に特許査定を得た登録特許も5件あります※)

※)特許検索方法については「コラム2」を参照

水素の製造および輸送に関する技術課題が解消の方向に向かえば、各地に建設される水素ステーション建設の機運が加速化される可能性もあります。

東芝も新たに水素事業を本格化

 水素インフラでは新たに東芝もグループ内の水素関連技術を融合した一貫ソリューションを展開していく方針を示しています。具体的には「地産地消」型のエネルギー供給システム事業と、「水素サプライチェーン」事業の展開に取り組む計画を示しています(図6)。

photo 図6:東芝が目指す水素地産地象事業と水素サプライチェーンの概要図 ※出典:東芝

コラム2

日本市場への水素供給をビジネス機会と捉える日本企業の特許出願動向

  1. 「CO2フリー水素サプライチェーン構想」(川崎重工業)関連の日本特許出願動向(検索日:2015年3月10日):輸送のための水素の液化が技術課題となるので「検索式=(出願人:川崎重工業)*(全文:液化水素)」を用い、公開系特許が11件出願されていることを確認した。そのうち、6件は特許査定を得た登録特許となっている。
  2. 「水素サプライチェーン構想」(千代田化工建設)関連の日本特許出願動向(検索日:2015年3月10日):岡田佳巳氏には,論文とインタビュー記事があることから、岡田氏が「有機ケミカルハイドライド法液化水素」技術のキーマンであることを知った。技術的には、トルエンに水素を付加させて、メチルシクロヘキサンとして輸送し、トルエンに戻して水素を回収しているので、「検索式=(出願人:千代田化工建設)*(発明者:岡田 佳巳+岡田 佳己)*(全文:有機ケミカルハイドライド法+(メチルシクロヘキサン*トルエン))」を用い、公開系特許出願が12件出願されていることを確認した。そのうち、5件は特許査定を得た登録特許となっている。なお、発明者については、名前の異表記までを考慮した検索式とした。

※)日本公開系特許:公開特許:通常の日本への特許出願

※)公表特許:PCT経由で日本を指定国とした特許出願

※)再公表特許:日本で国際出願しながら、日本を指定国とした特許出願


 では、世界の水素ステーションの普及動向はどうなっているでしょうか。

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