―― THETAで空間をキャプチャーすると、それが360度全方位の球体に貼り付けられて、見る人はその中に入っているという格好になります。その空間の中でユーザーは自由に自分が見たいところを見るという感じで、こういう見え方そのものが非常に面白いところだと思います。最初からこういう見せ方にするということは考えていたのですか。
高田 もともとスマートフォンと連携して1つの製品になるというのは、コンセプトの中にありました。スマートフォンのスワイプ動作ができるという前提ですね。球体マッピングもどういうマッピングが一番いいのかなど、かなりさまざまな議論がありました。どうしても撮影した映像のゆがみは完全には消せないので、それをいかに小さくし、見ていても気持ち悪くならないようにするためさまざまな工夫を施していることが特徴になります。
例えば、普通は球状にマッピングして、球の中心に居てグルグル見せているのですが、ズームアウトするとゆがみが大きくなってしまいます。そこで、少し視点を後ろに下げるような処理を施すことで、ゆがみを小さくし、快適に見えるようにしています。後はピンチ・スワイプ操作に対して実際の画面の反応が遅れると、どうしてもストレスがたまるので、アプリ上の作り込みはかなり力を入れたところです。
―― しかし360度といっても、カメラ自身のボディがありますから、そこは映り込んでしまいますよね。
高田 それもなるべく本体が写り込まないよう、形状の工夫で追い込んでいきました。レンズの真下はストンと落として、そこから距離をおいて膨らむようなデザインになっています。映像を表示した時に球体の底の部分に少しだけ写っているのは、このボディの膨らんだ部分になります。
大熊 映像に映る下の部分に「RICOH」のようなロゴか何かを付けた方がいいのではないかという意見は、社内でも試作時に多くありました。
澤口 ただ、われわれとしてはできるだけ何も貼らずに、できる限り下まで写せるようにしようというのが最初のコンセプトでした。最終的には映像をつなぐ部分の精度の問題になってきます。
―― 撮影した写真は、専用サイトで公開したり、リンクを貼ればブログなどにも埋め込んだりできますよね。ネットで公開することを前提の見せ方にしたというのも良かった点だと思います。こういうのが大好きなガジェッターは「こんなの撮れた」とか自慢したいわけです。みんなが結果を見られる仕組みを作ったことは大きかったのではないですか。
高田 そうですね。従来のカメラと全く違うので、多くの人はどう使っていいのか分からないのではないかと思っていました。ですから、最初に使ってくれる方は、画像を加工して作品として発表するような、プロとまではいかないまでもセミプロや芸術関係の人だと想定していました。
しかし、結果として、ガジェット好きな方々が、われわれが想定よりもかなり多くご購入いただいているように思います。そういう方々が中身をハックして、自分なりのリモコンなどを作って、それがさらに他のガジェッターに広がっていく循環が生まれているような気がします。購買層は縦にも横にも広がった感じですね。
―― そもそもTHETAは、絶対に撮影者が写ってしまいますよね。最初はそこに抵抗があるのではないかと思って見ていました。しかし、そういうしているうちにセルフィー(自分撮り写真)ブームが来てしまって、THETAの追い風になったような気がしますね。
高田 確かにその変化はあります。最近だと、いかに自分を入れ込んで撮るかというように変わって来ました。この1、2年の間に意識の変化がユーザーの中で起きている感じがしますね。その波に乗れているということはあるかもしれません。
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