「データ通信を利用した環境認識」の議論の内容については、デンソー 技術開発センター DP-V2X室 担当部長の難波秀彰氏が説明を行った。このテーマでは主に、自動運転の実現に向けて車両がさまざまな対象と通信する“Connected Vehicles”となる中で、相互接続性の担保や周波数の標準化、セキュリティに関する部分が議論されたという。
協調型自動運転が実現する場合、自動車は他の車両との車車間通信、ダイナミックマップなどの情報を取得するためのクラウドサーバーとの通信、インフラとの路車間通信など、異なるさまざまな相手と通信する必要があると考えられている。それぞれの通信規格や搭載する車載通信機器の標準化、セキュリティの問題など解決すべき課題は多い。
その一例として、周波数帯の問題がある。自動運転技術が搭載される車両には、車載レーダー、車車間通信や路車間通信用の通信機器など、異なる周波数帯を利用する機器が複数搭載される。こうした車両が数多く走行する場合、特定の周波数帯が混雑するといったことが予想される。SIP-adusは、こうした周波数帯の問題に向けた実証実験も行っており、国際会議の場ではその内容が紹介されたという。
SIP-adusでは、自動運転のレベルを4段階に分けて定義している。例えば、最も高いレベル4は「加速・操舵・制御全てをドライバー以外が実施する。ドライバーが車両の操作に全く関与しない状態」と定義されており、実用化の目標は2020年代後半となっている。日米欧それぞれの自動運転技術の実用化に向けた研究開発において、開発の方向性や課題の認識といった点では共通する部分はある。しかし、こうした自動運転のレベルに関する定義や、どのレベルをいつまでに実用化するのかといった目標は一様ではない。
こうした自動運転の国際的な定義について、SIP-adusのプログラムディレクターである渡邉浩之氏は「まだ国際標準化のディスカッションは十分に行えていない。現時点での各国の定義の差は、いつの議論の内容を反映しているかという時間的な差でしかない。2014年末から国際標準化機構(ISO)や国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で、自動運転の定義の国際標準化に向けた会議が積極的に行われている。WP29では英国と日本が共同議長を務めている。今後も積極的にこうした国際標準化の議論に参加していく方針」と今後の展望について語った。
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