製造業がIoTをビジネス化する上で、IoTデバイスの開発以上にハードルが高いのが、IoTデバイスから得られるビッグデータの活用だろう。ベンチャー企業のトレジャーデータは、このIoTとビッグデータを結び付けるためのデータベースサービスを製造業に提案している。同社の日本法人でマーケティング担当ディレクターを務める堀内健后氏に、取り組みの詳細を聞いた。
2014年は「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」という言葉が、製造業に浸透した1年と言っていいだろう。インターネットにつながるさまざまなモノから得られる膨大な情報を活用し、今までにない機能やユーザーの利便性などを実現することこそが、IoTのビジネスコンセプトになっている。
製造業がIoTをビジネス化する上で、IoTデバイスそのものの開発よりもハードルが高いのが、IoTデバイスから得られる情報を蓄積/分析/活用する部分だろう。これらの集積した情報はビッグデータとも呼ばれるが、従来はIT業界が扱うものであり、製造業にとって無関係と捉えている企業がほとんどだったからだ。
しかしこれから、製造業が自身の手でIoTを活用した新たなビジネスモデル構築や業務改善を実現するには、ビッグデータをどう扱うかということは大きなテーマとなる。このIoTとビッグデータを結び付けるデータベースサービスを製造業に提案しているのが、創業3年目のベンチャー企業・トレジャーデータだ。同社の日本法人でマーケティング担当ディレクターを務める堀内健后氏に、取り組みの詳細を聞いた。
MONOist まず、トレジャーデータがどういった企業なのかを教えてください。
堀内氏 トレジャーデータは米国シリコンバレーに本社がありますが、創業したのは3人の日本人です。三井物産時代からオープンソースビジネスに関するキャリアを積んできたCEOの芳川裕誠氏と、日本のHadoopコミュニティーの中心人物であるCTOの太田一樹氏、ビッグデータ活用で重要なログコレクター「Fluented」を開発したソフトウェアエンジニアの古橋貞之氏が2011年12月に創業しました。
Yahoo!創業者のJerry Yang氏をはじめ有力投資家やベンチャーキャピタルから約800万米ドルの資金を得て、2012年後半からデータベースサービスの「トレジャーデータサービス」の提供を始めました。既に顧客数は百数十社に上ります。
MONOist トレジャーデータサービスの特徴は。
堀内氏 従来、データベースを構築しようとすると、ハードウェアを発注してソフトウェアを入れるだけで3カ月、データベースを構築してデータの分析始めるまでだと約1年かかるのが一般的でした。コストも数千万円〜数億円と大規模になります。
トレジャーデータサービスは、クラウドを活用したデータベースサービスです。データベースのためのハードウェアを持つ必要がないこと、データベースの構築から分析開始までの期間が数日で済むこと、何より従来のデータベースよりはるかに安価な数十万円から利用できることが特徴になっています。
MONOist ハードウェアを持つ必要がないのはクラウドを活用しているからだと思いますが、分析開始まで短期間で済ませられたり、安価に利用できたりするのはなぜですか。
堀内氏 一般的なデータベースは、収集するデータに合わせて定義や属性をあらかじめ決めておくスキーマという構造を用います。これに対してトレジャーデータサービスは、取りあえず生データをためていくスキーマレスなのです。データベース構築のコストの60%はデータを集めるところで発生していると言われています。その部分を単純化したことにより、分析開始までの期間が短くなり、コストも低減できるというわけです。
MONOist スキーマレスによるデメリットはないのでしょうか。
堀内氏 トレジャーデータサービスの分析エンジンは、タイムスタンプのあるデータを扱うことを前提としています。つまり、テキストデータや画像データなどを扱うのには不向きです。というよりも、それらを扱わないことを決めたからこそ、トレジャーデータサービスの特徴を実現できたのです。
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