ディーモノコックの採用や、足回り部品の見直しによってムーヴの基本性能の向上を実現させた背景には、ダイハツ工業の開発体制の刷新があるという。「これまでは車両のプラットフォームやサスペンションなど、部位別に行っていた開発体制を、『基本性能を高める』といった目的別の組織に再編したことで実現させた」(三井氏)。
こうした開発体制により生みだされた新型ムーヴと、競合車となるスズキのワゴンRは燃費性能の向上に対するアプローチがやや異なる。ワゴンRは、2014年8月に発表したマイナーチェンジで、モーターによって走行をアシストするS-エネチャージを搭載することで32.4km/lの燃費性能を実現した。
一方ダイハツが選択したのは、「既存の技術レベルをさらに向上させることで、軽自動車の本質である低価格・低燃費を実現する」という方法である。つまり、ワゴンRのようにS-エネチャージという新システムを搭載するのではなく、プラットフォームそのものを改良することにより31.0km/lというJC08モード燃費と低価格を実現したというのだ。
その具体例としてダイハツが挙げるのが、新型ムーヴの燃費性能向上のために行った、車体の空気抵抗の大幅な低減である。ドアミラー形状の再設計や、樹脂素材を利用したスポイラー一体型のバックドアの採用などにより、空気抵抗を約10%低減させている。
また、新ボディ骨格構造のディーモノコックにしても、炭素繊維強化樹脂や超々ハイテン材といった高価な素材ではなく、安価なハイテン材を有効活用によって高性能を実現するというコストを意識した設計コンセプトに基づいている。ダイハツは、ディーモノコックを他の車種にも採用する方針を示しており、ボディ骨格の高剛性・軽量化による性能向上という開発アプローチは継続される可能性が高い。
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