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» 2014年02月06日 10時30分 公開

マイクロモノづくりにおけるクラウドファンディング活用法(後編)マイクロモノづくり概論(6)(3/3 ページ)

[三木康司/enmono,MONOist]
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対価を試算する

 プロジェクトの目標金額が決まったら、プロジェクト支援者への対価(インセンティブ)を設定しよう。この対価の設定はクラウドファンディングを行う上で原価計算の次に重要な作業である。なぜなら、どれくらい魅力的な対価を、どの程度の価格で設定できるかどうかで、集められる支援金額が大きく変わってくるからである。

 以下のような対価設定シートを作成し、過去に同様なプロジェクトがないかどうか、国内外のクラウドファンディングサイトを徹底的に調べ、成功要因や失敗要因を分析しよう。

費用に基づき対価を試算する

 それぞれの対価がいくらで設定されており、そこに何人のパトロンが付いたのかを分析し、自分のプロジェクトなら、どの対価が最も人気になるのか考えよう。

対価設定には商人(あきんど)の感覚が必要

 対価設定がクラウドファンディングの調達資金の大小を左右すると言っても過言ではない。特にモノづくり系のクラウドファンディングでは、それがはまれば、目標金額を遙か上回る資金が調達できる。なぜなら、イベント系やチャリティ系のプロジェクトとは異なり、プロダクト系のプロジェクトは量産体制さえ整えてしまえば、何個でも出荷できるからだ。そのポイントは、「どれだけ“お得感”を出せるのか」。これに尽きる。

 人間は、「上」「中」「下」という価格を提示されたら、ほぼ「中」を選択するという経済心理があるといわれる。なので、その「中」の対価に支援金をより多く集めるため、まず基本対価「中」を決め、基本対価の「上」の対価と、その「下」の対価を設定する。

 具体的な例を数字で挙げるならば、「下=3000円、中=5000円、上=7000円」というそんな感じだ。しかし、キリがよい数字よりも、例えば「下=2800円、中=4800円、上=9800円」というように、端数を多少“負けた”方が良い結果が出ることがある。

代理店パッケージが対価の大口資金獲得のキモ

 クラウドファンディングで大きな金額を集めるプロジェクトでは、その多くが「代理店パッケージ」を用意している。そのプロダクトが魅力的であればあるほど、代理店パッケージによって大きな金額を集められる。

 代理店パッケージは、クラウドファンディングで商材を仕入れ、店舗、ECサイト、Yahooオークションなどで販売する人向けである。

 今、ECサイトはどこも価格競争にさらされており、同じ商品ならば価格が一番安い大手のECサイトなどで購入されてしまう。そのために、まだ他では販売していない魅力的な製品をいち早く仕入れ、独自の価格維持して販売したいのだ。この代理店パッケージをいかに魅力的な価格にできるのか、ということが大口の資金獲得につながる。

 ここまで説明してきた値付けの経済学は、これで本が1冊書けそうなほど奥深い。価格の感覚を養うには、とにかく、過去のクラウドファンディングで大成功したものを見て参考にすることだ。数多くを見ること、そして自分の対価が一般の人にどう受け入れられるのかということを、協力してくれるメイカーズ仲間や、友人・知人にできるだけ多く聞いてみよう。モノづくり職人やエンジニアがまさに商人の感覚を持つべきステージなのである。

対価の個数の増やし過ぎは逆効果

 価格の心理学では、選択肢が多すぎると、人は迷ってしまい、結局は何も選べないということが分かっているという。クラウドファンディングの対価も、さまざまなバリエーションをセットしたくなってしまうが、できるだけ数を絞った方がよい。海外のクラウドファンディングプロジェクトを分析した結果によれば、9〜11個くらいの対価数が最適であるというデータが出ているという。

 対価を設定した後、忘れがちなのが送料である。1つの対価の中に送料も含めておかないと、数個の送料はたいしたことがないと思うかもしれないが、仮にプロジェクトが大きく成功し、100〜200個分の支援が入った時には大きな金額になる。

 全国一律料金でモノを送れるわけではないので、どの方法が最も安い方法なのか、あるいはプロダクトの大きさ・重さによって送料が変わる場合もあるので、あらかじめ見積もっておく必要がある。また離島など遠隔地に対価を送付する際は別料金が発生することもあるなどただし書きが必要になる場合もある。

資金調達できても、課題がたくさん

 ここまでクラウドファンディングにおける原価見積もりの考え方から、対価の設定の考え方まで説明をしてきた。モノづくり系クラウドファンディングは、資金が十分にある場合でも失敗することもある。それは、冒頭でも挙げた以下の3つの原因の中のうち、2と3の部分の力不足も大いにある

  1. プロジェクトコストの見積もりミス。
  2. 「プロトタイプ」と「量産」の違いの理解不足
  3. 製造先が見つからない・製造先との信頼関係構築ベタ

 今回は、1だけをご紹介したが、2と3に関しては、今後予定している新連載の方で説明できる機会があればと考えている。

 クラウドファンディングでは、プチ起業に近いレベルのマネジメント能力が必要である。逆に言えば、クラウドファンディングを使ってモノづくりを成功させれば、相当の経営的な経験値を積むことも可能だ。

 「クラウドファンディングで資金調達をして、かつモノづくりする」というのは、簡単ではない。資金調達に成功し、きちんと約束通りプロダクトを出荷できているプロジェクトの裏側では、大変な作業が行われているということを理解していただければ幸いである。(終わり)

 筆者が代表を務めるenmonoは、このクラウドファンディングの教育効果を期待し、クラウドファンディングサービス「zenmono」を活用する「マイクロモノづくり経営革新講座」の中で経営者のレベルアップを図るプログラムも定期的に開催しているので、興味がある方は当社Webページを一度ご覧いただきたい。



Profile

三木 康司(みき こうじ)

1968年生まれ。enmono 代表取締役。「マイクロモノづくり」の提唱者、啓蒙家。大学卒業後、富士通に入社、その後インターネットを活用した経営を学ぶため、慶應義塾大学に進学(藤沢キャンパス)。博士課程の研究途中で、中小企業支援会社のNCネットワークと知り合い、日本における中小製造業支援の必要性を強烈に感じ同社へ入社。同社にて技術担当役員を務めた後、2010年11月、「マイクロモノづくり」のコンセプトを広めるためenmonoを創業。

「マイクロモノづくり」の啓蒙活動を通じ、最終製品に日本の町工場の持つ強みをどのように落とし込むのかということに注力し、日々活動中。インターネット創生期からWebを使った製造業を支援する活動も行ってきたWeb PRの専門家である。「大日本モノづくり党」(Facebook グループ)党首。

Twitterアカウント:@mikikouj

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