連載
» 2014年02月06日 10時30分 公開

マイクロモノづくりにおけるクラウドファンディング活用法(後編)マイクロモノづくり概論(6)(2/3 ページ)

[三木康司/enmono,MONOist]

クラウドファンディングにおける目標金額の設定

 さて次は、見積もったプロジェクト全体のコストから、クラウドファンディングの目標金額をどのように設定するかである。

 この記事をご覧になっている方は、製造設備を持たないメイカーズの方もいるだろうし、自社の製造設備を持つ中小製造業の方もいらっしゃるだろう。今回は、「製造設備をある程度持つ、中小製造業の方がクラウドファンディングを行うこと」を前提に話を進める。

 中小製造業であれば、製造業であるので、もちろん自社の設備を持っているだろう。板金加工、溶接、プレス部品製造、射出成形、レーザー加工、金型設計、金型製造、などさまざまな自社設備を持ち、それぞれ独自の加工技術もあるだろう。

 マイクロモノづくりでは、まず自社の製造設備を生かした自社商品開発を提唱しているので、自社の加工技術を用いることが前提になる。しかし、必ずしも自社商品開発は自社の技術だけで、できるわけではない。

 従って、自社の技術でできる範囲の開発費用は内部コストとして捉え、それ以外のコストは外部コストとして捉えるべきである。会社として製品を開発する場合は、内部コストはプロジェクト費用に入れるべきではない。

 クラウドファンディングのプロジェクト目標金額を決める際にも、社内で発生するコストは、その一部をプロジェクト費用に含めるに留め、それ以外は内部コストとして処理するのが妥当である。

 マイクロモノづくりは、経営者自身が製品開発担当者となり製品開発していくという、全く新しい自社製品開発手法である。一般的に、製品開発には膨大な時間を必要とする。そこで経営者自身の時間単価と膨大な開発時間を算出していては、膨大な費用になってしまう。そのような「内部的な」コストをクラウドファンディングのプロジェクト費用に全て入れ込むのは現実的ではない。

 また、マイクロモノづくりでは、社内の技術と設備を用いることで生産できる製品を開発することが前提である。一般的な製造業では、加工費のコストテーブルを作成し、稼働時間に応じて加工設備の費用を稼働時間で割って顧客に請求する方式を取るが、それと同様に、時間チャージが非常に高い加工機械で製造したコスト全てクラウドファンディングの費用の中に入れ込んでしまうのも、やはり現実的ではない。

 以下の「(基本編)モノづくり系プロジェクトの目標金額設定の考え方」をご覧いただこう。このチャートの場合では、基本的な設計と、一部の加工ができる製造業を前提に書いてみた。

町工場の場合の目標金額設定の考え方

 こちらのチャートの左側が「トータルコスト」である、そしてその右側のチャートが「外部流失金」の合計額である。それぞれ、設計、デザイン、材料、加工、金型、外注加工費、梱包材料費用、送料がある。こちらのチャートに書いた想定の会社では、設計と加工の一部が可能な小規模な製造業を想定している。

 製品に必要な「デザイン」は外注、「材料」は外部から購入、「加工」は社内で、さらに「金型」を必要とする場合は金型費も外注する、また全ての加工を社内でできない場合は「外注費」、忘れてはいけないのが支援してくれたパトロンに送付するための「梱包費用」や「送料」である。

 クラウドファンディングで開発した製品のパッケージは、こだわりすぎる必要はないが、この段階から自社製品時と同等のスペックにしておき、そのまま自社製品として出荷できる体制にしておくべきだろう。

 これら全ての「外部流出金」の合計に、クラウドファンディングサイト(プラットフォーマー)に支払う手数料を足して、プロジェクトの目標金額とする。通常、その手数料は15〜20%である。この合計金額より多く集まれば、それがプロジェクト運営者にとっての「利益」となる。

 この利益の処理に関しては、会計士や税理士の専門領域になるので、この記事では特に言及しないが、現在、この領域はグレーゾーンである。最近ではクラウドファンディングの会計や税務に詳しい専門家も出てきているので、相談してみるとよい。

中小製造業向き「目標金額設定の応用編」

 これまで説明した目標金額設定の考え方は、基本編である。外部コストとして社外に流出する現金を、クラウドファンディングプロジェクトで回収するということだった。

 その応用編は、社内で対応可能な範囲は内部コストとしてプロジェクト費用には組み込まない考えは同じである。ただし、クラウドファンディングを実施し、入ってきた現金で、プロジェクトに掛かる費用を全て捻出するのではなく、製品開発に掛かる一部の費用を捻出するという点が異なる。

 米国においては、クラウドファンディングで数億円単位の資金を集める手法も確立されつつある(そもそもパトロンになるベースの人数が桁違いであるという背景もあるが)。一方、日本国内におけるクラウドファンディングのプロジェクト規模は、数十万〜数百万円という範囲である。

 モノづくりには、とかく大きな費用が掛かる。その大きな費用を回収するというのは、国内のクラウドファンディングサイトの集金力ではまだ難しいのが現状である。従って、クラウドファンディングを、将来のユーザー候補から開発資金の一部を支援してもらいつつ、ユーザーからのフィードバック(意見)を受けられる、いわゆるマーケティングツールとして活用するという考え方がある。これがすなわち、応用編である。

 応用編は個人であるメイカーズにはおすすめしない。なぜならば、資金的な余裕がなければ、仮にプロジェクトが成立して資金が入ってきても、支出の方が大きくなってしまい、プロジェクト自体が成立しなくなるからだ。よって、資金的にはある程度余裕があり、自社製品のための発射台としてクラウドファンディングを活用したいと考えている中小企業向けとした。

 それでは、以下の目標金額設定の応用編のチャートをご覧いただこう。

目標金額の考え方【応用編】

 まず、プロジェクト全体に掛かる費用を算出する。そこから、クラウドファンディングのサイトの規模や、その製品の性質に応じて、表面上の回収を希望する金額を決定し、そこにクラウドファンディングサイトへの支払い手数料をプラスし、「この額なら絶対集まる」という第一の目標金額を決定する。

 次に、目標金額をクリアしたら、前編で紹介したように、プレスリリース発信や、イベントでの告知活動などを行う。運良くプレスリリースがマスメディアに掲載された場合の対処方法なども計画しておき、「ここまでは伸びるであろう」という第2の目標金額を設定しておく。

 開発費用が大きな案件であれば、この第2の目標金額でも全ての原価を回収することはできない。ただしプロジェクトの目標達成後、販売で得られる利益で残りの開発費用を回収するという考え方がある。目標達成すれば、ある程度のマーケットニーズが把握でき、それと同時に世の中に製品を広く告知したことにもなり、自社製品として発売が可能になる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.