ロボットに興味がなかったPepperの開発者が新たにロボットを作る理由モノづくり×ベンチャー インタビュー(1/3 ページ)

ソフトバンクの感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発をけん引したことで知られる林要氏。子どものころ「ロボットに興味がなかった」と話す林氏だが、Pepperだけでなく、ベンチャーを起業して新たなロボットを開発しようとしている。林氏は、なぜまたロボット開発に取り組んでいるのだろうか。

» 2016年09月05日 09時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 2015年6月から一般販売が始まったソフトバンクの感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」。テレビCMへの出演による社会へのアピールのみならず、店頭や展示会場での顧客対応などで利用が広がっており、IBMの人工知能「Watson」との連携などさらなる進化も見せている。

 このPepperの開発チームを率いていたのが林要氏である。14年間勤めたトヨタ自動車から2012年にソフトバンクに移って、Pepperの開発チームに合流。そこから開発を加速する原動力となり、2014年6月の正式発表にこぎ着けた。一般販売の開始などPepperの事業化にめどがついた2015年9月に同社を退職し、同年11月にロボット開発ベンチャー・GROOVE Xを設立している。

 林氏はGROOVE Xで、Pepperとは異なるタイプのロボットの開発を目指している。どのようなロボットなのか具体的な姿や形は明らかにしていないものの、2019年の発売を目標に開発を鋭意進めているところだ。

 今回は林氏に、ロボット開発に携わるようになった背景や、ソフトバンクを退社してGROOVE Xを起業した理由、開発中のロボットのコンセプトなどについて聞いた。



MONOist かつてはPepperの開発を率い、現在はGROOVE Xで新しいコンセプトのロボットを開発されているわけですが、子ども時代にはどんなロボットが好きだったんでしょうか。ロボット開発を手掛けている方の多くは、「鉄腕アトム」や「マジンガーZ」、「機動戦士ガンダム」などのロボットアニメに影響を受けているイメージがありますが。

GROOVE Xの林要氏 林要(はやし・かなめ)。1973年愛知県生まれ。1998年に東京都立科学技術大学(現首都大学東京)大学院を終了後、トヨタ自動車に入社。スーパーカー「LFA」の空力開発、F1レースカー開発、製品企画部での量産車開発マネジメントなどに従事。2011年にソフトバンクアカデミアに外部1期生として参加し、2012年にソフトバンクに入社。「Pepper」の開発リーダーを務める。Pepper発売後の2015年9月にソフトバンクを退職し、同年11月にGROOVE Xを設立。同社CEOを務める

林氏 子どものころは、ロボットにそれほど興味はありませんでした。強いて言えば「ドラえもん」は好きで見ていましたが、他の子どもと同程度に好きだったという感じです。ロボットアニメよりも、スタジオジブリのアニメの方が好きでしたね。ジブリアニメに出てくる生き物がそばにいたら楽しいだろうな、などと思っていました。

 逆に言うと、ロボットはこうでなければならないといった先入観はありません。

 あと乗り物全般が好きです。「風の谷のナウシカ」に出てくるメーヴェには興味がありましたし、その影響もあってグライダーもやりました。自動車、自転車、オートバイも好きですね。

MONOist 大学院卒業後の1998年、トヨタ自動車に入社しました。ここでトヨタ自動車を選んだのも、乗り物が好きだったからでしょうか。

林氏 もちろん自動車は好きなんですが、それ以上に自分で何かを作りたいという思いが強くありました。トヨタ自動車ならそれができるのではないかと判断したんです。

 自動車開発がしたいというのではなく、趣味性の高いモノを作りたいと思っていました。当時はバブル崩壊後の就職氷河期で、ほとんどの企業はそんなのものを作る余裕はありませんでした。自分の夢をかなえられる場所はどこだろうかと考え、質実剛健そうだが収益に余裕もあるトヨタならきっとやれると考えたわけです。

 大きな会社を希望していたわけでもありません。就職して一番大きな影響を受けるのはどんな上司の下で働くかであって、会社の規模ではありません。会社に養ってもらうことよりも、キャリアを次に生かせることを重視していました。

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