いまさら聞けない EtherCAT入門産業用ネットワーク技術解説(2/4 ページ)

» 2013年09月17日 09時30分 公開
[町井和美MONOist]

EtherCATの機能原理

 EtherCATのネットワークは制御をつかさどるマスターと、従属する入出力スレーブで構成され、デジタルやアナログ、エンコーダカウンタなどの入出力情報が連結された“プロセスデータ”をIEEE 802.3標準Ethernetフレームに載せてやりとりします(図2)。


EtherCATフレームフォーマット 図2 EtherCATフレームフォーマット(4台のスレーブ例) ※画像クリックで拡大表示

 EtherCATは、これまでのフィールドネットワークによく使われていたポーリングや、時分割、ブロードキャストのようなリアルタイム通信方式とは“全く異なるリアルタイム通信方式”を実現していることが最大の特長です。EtherCATでは、ハンドシェイクがありませんので、オーバーヘッドがなく高い帯域利用効率を誇ります。

 一体どのようにハンドシェイクを不要にしているのでしょうか。実は、マスターから出発するEtherCATパケットは、順番に全てのスレーブを通過していき、折り返して再びマスターへ返るように設計されているのです。EtherCATでは、これを“1サイクル”とした伝達方法で全入出力処理を終えます。それは、EtherCATフレームが各スレーブを通過する際、それぞれオンザフライでI/Oを処理するためです。

 どういうことなのか、EtheCATパケットの流れを図で説明します(図3)。

EtherCATパケットの流れ(3台のスレーブ例) 図3 EtherCATパケットの流れ(3台のスレーブ例)

(1) 制御アプリケーションによって作り出される装置への出力信号パターンは、マスターによってEtherCATフレームに加工されます。これが各スレーブに出力したいビット列を連結したプロセスイメージとなります。マスターは、Ethernetコントローラを制御して、このEtherCATフレームを回線へ送出します。これが通信の起点となります。

(2) マスターから回線へ送出されたEtherCATフレームは、最初のスレーブのEthernetポートへ流入して、同スレーブが備えるもう1つのEthernetポートから下流のスレーブへ流出します。

(3) この際、各スレーブは受信中のEtherCATフレームのうち、自身が出力すべきデータのビット位置とビット幅を認識しているので、オンザフライに出力処理を行います。

(4) 同時に、スレーブはEtherCATフレームのうち、自身の入力信号パターンを格納すべきビット位置とビット幅を認識しているので、オンザフライに入力処理を行い、EtherCATフレームの所定位置に入力データを書き込みます。

(5) スレーブを抜けたEtherCATフレームは、次のスレーブへ流入。以降、次のスレーブへ、次のスレーブへ……と続きます((6)〜(10))。つまり、EtherCATフレームがスレーブを通過する際に、出力処理と入力処理が行われます。

(11) 末端のスレーブまで出力処理を終えると、今度はEtherCATフレームが逆流して、マスターに戻り始めます((12)〜(15))。

(16) もともとマスターから送出されたEtherCATフレームが、最終的にブーメランのようにネットワークを周回して返ってくるまでの間に、全ての出力処理と入力処理を終えています。これがEtherCATの機能原理です。

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