高速ネットワークサービスを展開する米Akamaiは、クラウドの普及により業容を拡大。製造業向けではグローバル化による拠点間ネットワークの高速化とともにM2Mとの相性の良さを訴える。
米Akamaiは、世界中に設置したサーバとネットワーク技術を組み合わせ、高速ネットワーク基盤およびコンテンツ配信サービスを展開。クラウド・コンピューティングの普及により、ネットワーク基盤の品質がビジネス効率に直結する中、業容を拡大している。
Akamaiで企業向けのプロダクトラインディレクターを務めるギャリー・バラビオ(Gary Ballabio)氏は「インターネットの高速化を担う当社にとってクラウド活用の拡大は大きなチャンス。eコマース(電子商取引)や銀行向けなどでは数多くのニーズがある。製造業では、グローバルでの拠点間ネットワークの最適化に加え、M2M(マシン・ツー・マシン)のネットワーク基盤を支える技術として、当社のサービスを活用するケースが目立っている」と話す。
製造業のM2Mは、サービスや保守と結び付けることで、サービス部門の最適化や故障の未然防止、顧客満足度の向上、情報の可視化を実現するための技術として注目度が高まっている(関連記事:サービス部門をプロフィットセンターへ――サービスは利益を生み出す宝の山)。
自社の製品にGPSや稼働状況などを記録する機器を搭載し、その情報をM2Mネットワークにより共有し蓄積する。さらに、これらの情報を基に分析、解析を行い、知見を導き出すというものだ。得た情報や知見をさらに自社内や顧客、代理店などと共有することで、問題解決などに結び付けられる。
ただ、M2Mを導入する際に意外に見逃されがちになるのが、ネットワーク基盤だ。M2Mはネットワーク経由で情報を送るため、高速で安定したネットワーク基盤は必須となる。機器からの情報の獲得と共に、分析するためのデータの集約、顧客や代理店などへの情報提供など、各種作業のパフォーマンスがネットワーク品質に掛かってくる。
「あまり意識されないがM2Mにおける通信品質は成功を左右するポイントの1つだ。日立建機の取り組みが好例になるだろう」とバラビオ氏は話す。
日立建機は、保守やメンテナンスのため各種センサーを建設機械に内蔵し、各建設機械の情報や製品のメンテナンスマニュアルを見られる販売店向けの情報サービス「Global e-Service」を運用している。同サービスは17言語をサポートし、ユーザー数は2万人。5万台以上のM2M対応建機から情報を取得しているという。従来は各地にサーバを設置していたが、コスト削減や情報の一元化の観点から数年前から日本のサーバに集約しシングルインスタンス化を図った。
しかし、それにより、業務のパフォーマンスがネットワーク品質に大幅に左右されるようになり、欧州など世界各地の拠点からは「情報があっても使いづらい」と不満の声が出ていたという。そこでネットワーク品質の向上を検討しAkamaiの技術を採用したという。「通信速度は、欧州で4倍、米国で1.5倍、中国は8倍、豪州で3倍(それぞれ最大で)になった。運用率も上がっている」と日本法人のアカマイ・テクノロジーズ マーケティング本部 本部長の松原達也氏は話す。
バラビオ氏は「クラウド活用はコスト削減などで語られるケースが多いが、M2Mは新たなビジネスにつながる実践的なものだ。現在はサービスやメンテナンスが中心だが、ネットワーク品質が向上し機器から取得できる情報がより多くのものになれば、さらに新たなビジネスモデルが生まれるかもしれない。そこに当社は貢献できると考えている」と話している。
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