MEMS/3次元実装向け製造装置を手掛けるEV Groupが、日本国内における新製品展開を強化する。その中でも、開発中の反射防止膜塗布装置は、太陽光発電パネルの反射光を従来比4分の1以下に低減して、発電効率を3%以上高められるという。
MEMS/3次元実装向け製造装置を手掛けるオーストリアEV Group(EVG)の日本法人・イーヴィグループジャパンは2013年4月22日、東京都内で会見を開き、シリコンウエハーや太陽光パネル向け製造装置の最新技術について説明した。300mmウエハーに対応するUVナノインプリントリソグラフィ(UV-NIL)装置や太陽光発電パネル向けの反射防止膜塗布装置など、新製品の事業拡大に注力する方針だ。
EVGは、ウエハーレベル接合装置(ウエハーボンダ)の技術で強みを持つ。イーヴィグループジャパン社長の山本宏氏は、「ウエハーレベル接合装置における当社の世界シェアは、永久接合用で80%以上、仮張り合わせ用だと90%以上、SOI(Silicon on Insulator)ウエハーの製造装置ではほぼ100%」と主張する。また、フォトマスク用露光装置の1つであるマスクアライナーについても、30%以上の世界シェアを確保しているという。EVGは1980年の創業以来、全世界で累計1700台以上の装置を出荷してきた。既に、最新の450mmウエハーに対応するウエハーレベル接合装置も、フランスのSOIサプライヤであるSOITECに納品しており、欧州で進められている450mmサイズSOIウエハー開発プロジェクトなどの先端技術開発に活用されている。
こうした中で、同社が今後の成長を期待しているのが、レジスト塗布機「EVG150」、大面積ステッパNIL装置「EVG770」、および反射防止膜塗布装置などである。
まず、50〜200mmのウエハーサイズに対応するEVG150は、段差が大きい構造であっても最適なレジスト塗布ができる「Omni Spray」や、アスペクト比が高いビアの塗布に適した「Nano Spray」など、最大4基の塗布モジュールを組み合わせられる。1つのモジュール内に、ホットプレートや冷却プレートなどを組み合わせた多段モジュールを最大2個実装できるなど、量産性にも優れている。
EVG770は、アライメント精度が最高20nm、解像度が10nmのUV-NIL装置である。同じパターンを繰り返し作り込む場合に、パターンニングに掛かるコストを大幅に削減できることを特徴とする。NILの応用となる「ウエハーレベルUV-NIL」装置としても利用されている。適用例には、携帯電話機に内蔵されているカメラ用のレンズ製造がある。撮像素子を作り込んだウエハー上に、大量のレンズを一度に形成できることから、大幅なコストダウンを実現できる。さらに、「現在は開発段階」と前置きしながら、ウエハーの表裏両サイドにレンズを一括して形成する装置の開発も行っているという。
国内で注目を集めそうなのが、ガラスパネル上に反射防止膜を形成する塗布技術だ。ガラス上に二酸化ケイ素(SiO2)のポーラス(多孔質)膜を形成することで入射光の反射を抑えて、変換効率を高める効果が得られる。成膜しない場合と比べて、反射光の光量を4分の1以下に低減できるという。同社は、「太陽光発電パネルのカバーガラスにこの反射防止膜を形成したところ、発電効率を少なくとも3%向上できた」と主張する。その上、ポーラス膜の成膜は、室温/大気圧中で行えるため、製造プロセスのコストも抑えられる。このポーラス膜が、20年相当の耐候性を有していることも確認済みという。
反射防止膜塗布装置は、材料サプライヤであるオーストラリアのBrisbane Materials(BMT)とともに、EVG本社内に設置した共同アプリケーションラボで、デモ機を評価中である。デモ機は0.8×1.2mのガラスサイズに対応しているが、塗布用のノズルを増やしていけばさらなる大面積化も可能だ。しかも、ロールガラスやフロートガラス、パターン形成済みガラス、アニールガラス、強化ガラスなど、さまざまなガラスに反射防止膜を形成できるという。
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