デマンドレスポンスが役立つのは日本市場だけではない。日本の製造業は世界各地に製造拠点を持つ。電力事情が芳しくない諸国にも進出しなければならないからだ。
それでは実際に各国でデマンドレスポンスが広がる機運はあるのだろうか。
環境技術関連市場の調査会社である米Pike Researchは、産業用のデマンドレスポンスに関する報告書「Demand Response for Industrial Markets:Industrial Peak Load Curtailment and Payments: Global Market Analysis and Forecasts」を発表した*1)。
*1) 産業用デマンドレスポンスの利用者がピークタイムの負荷を削減することで、どのようなメリットがあるかについても報告している。日本では電力システム改革専門委員会の報告書の文面にしか存在しない仕組みが、米国市場では実現していることも分かる。
それによれば、デマンドレスポンス市場は、2012年から2019年の期間、年率14.7%で成長するという。デマンドレスポンスが広がるにつれて、ピーク消費電力の削減効果を産業界が認識することが成長の原動力になるという。2013年の市場規模は26.8GW、これが2019年までに62GWに成長すると予測した。全期間を通じて米国市場のシェアが最も大きい。
同報告書をまとめた同社のシニアリサーチアナリストであるマリアン・へディン(Marianne Hedin)氏によれば、現在の市場を引っ張っているのは米国だという。「1970年代半ばからの長い歴史があるうえに、近年、『自動』デマンドレスポンスの採用が米国で始まっている。米国外では、カナダや英国、フランス、南アフリカ、イスラエル、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどに採用の動きがあり、実証試験やシミュレーションの動きが始まっている」(同氏)。
Pike Researchの調査結果は、電力システム改革専門委員会が示した資料とも合致する(図2)。
産業界のうち、どのような業種がデマンドレスポンスに積極的なのだろうか。
調査レポートによれば、原材料関連が主力だ。石油精製やセメント、化学、鉄鋼、紙・パルプである。この他、食品や建設・建築資材、さらに情報技術にも広がっているという*2)。
*2) 原材料の生産は加熱、冷却など本質的にエネルギーを必要とする過程を含んでおり、エネルギー消費量が多いため、電力問題に関心がある。情報技術産業は、サーバの消費電力急増に苦しんでいる(関連記事1:「アップルも太陽電池、米国最大規模の燃料電池と組み合わせてデータセンターを運営」、関連記事2:「国内最高レベルのエネ効率を目指す、青森県でコンテナ型データセンターの実証実験」)。
農業プラントのような一見、デマンドレスポンスと無縁な産業セクタにも成長の兆しがあるのだという。農業プラントには水利システムが必要不可欠であり、水利システムは電力消費量が大きいからだ。
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