産業界にとって、電力不足とはピーク消費電力の引き下げを意味する。ピークが最も危険だということだ。ピーク消費電力問題を解決する手段はさまざまだが、需要家側にとっては、デマンドレスポンス(需要応答)が望ましい解だといえるだろう。
東日本大震災以降、電力をいかに確保するか、いかに省電力を進めるかが産業界の課題となっている。この問題は、月間の総消費電力量を引き下げることと、ピーク消費電力の引き下げという2つの課題に切り分けることが可能だ。
ピーク消費電力については、電力の供給側と需要家側をつなぐデマンドレスポンス(需要応答)が鍵を握ることは間違いないだろう。例えば、ある加熱工程で連続的に部品が流れているとしよう。これでは消費電力を引き下げるような仕組みには協力しにくい。しかし、市場取引で電力を確保できるならこのような工程を抱える工場でも運用できる。
経済産業省の審議会である総合資源エネルギー調査会総合部会 電力システム改革専門委員会は、2012年2月から2013年2月までの期間、今後のあるべき電力システムについて検討・議論し、報告書をとりまとめた(関連記事)。報告書では東日本大震災がもたらした環境変化として5点を挙げている。そのうち2点がデマンドレスポンスに関係する。
専門委員会によると、デマンドレスポンスとは、「卸市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させること」を指す。具体的な手法としては、時間帯別料金などの電気料金ベースのものと需給調整契約などのインセンティブベースのものに分けられるという(図1)。インセンティブベースが特に重要だ。
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