省エネ型データセンターを実現するには、ICT機器以外の消費電力を低減しなければならない。NTTファシリティーズは、直接外気冷房と高電圧給電システムを組み合わせて省エネ型を実現する。風力発電から電力を受けるノウハウも検証する。
データセンターは大量の電力を消費する。どれほどだろうか。グリーンIT推進協議会によれば*1)、2005年時点の国内データセンターの年間消費電力は146億kWh、省エネルギー技術を導入しないと、2025年には604億kWhまで増加する。これは福島第一原子力発電所全体(1〜6号機)が稼働率80%で発電したときの発電量の2倍に相当するほどだ。
*1) グリーンIT推進協議会調査分析委員会「2009年度グリーンIT推進協議会調査分析委員会報告書概要」2010年6月発行。
同協議会は技術革新を進めることで、2025年時点には443億kWhもの省エネが可能になるとも予測している。データセンターが内蔵するサーバやストレージ、ネットワーク機器(ICT機器)自体を効率化することも必要だが、空調や給電部分(電力損失低減)の改善の余地が大きい。
データセンター内のICT機器以外が消費する電力の指標がPUE(Power Usage Effectiveness、電力使用効率)である。「PUE=データセンター全体の消費電力/ICT機器の消費電力」という式で計算できる。2011年9月に米Googleが公開した資料によると、典型的なデータセンターの平均PUEは1.8、GoogleのGmail用データセンターでは1.16である。Googleによれば最新のデータセンターではICT機器の消費電力削減分よりも、それ以外の削減分の方が約7倍大きいという。
国内でもPUE低減を目指した取り組みが進んでいる。例えばNTTファシリティーズは空調エネルギーを低減し、再生可能エネルギーと組み合わせたコンテナサーバを開発中だ。「PUEで1.2を切るのが目標である」(同社)。
NTTファシリティーズは2012年2月6日、青森県の協力を得て、日本初となる風力発電を利用したコンテナ型データセンター(図1)の実証実験を開始したと発表した(図2)。1月31日に開始し、2013年3月まで継続する。
「1.2を切るPUE」を実現する手法は、直接外気冷房と高電圧(HVDC)給電システムだ。直接外気冷房では、間接外気冷房で必要な室外機や空調機、ポンプといった機器が不要になり、ファンとフィルターの組み合わせで冷却する。「青森県の冷涼な気候を利用することで、直接外気冷房の消費電力を5kW程度と少なくできる」(同社)。直接外気冷房を採用できるかどうかは、データセンターの設置場所に依存する他、サーバルームの温度・湿度条件に幅があることが条件となる。
HVDC給電システムのメリットは、交流と直流の相互変換の回数を減らすことで、総合変換効率を高めることにある(図3)。六ヶ所村の実証実験では交流200V供給を受けた電力を、コンテナ内部で直流380Vに変換して、内部で引き回す。一部380Vで稼働するサーバも採用する予定だ。HVDC給電システムとして、2011年11月に同社が販売を開始した製品を用いた。
実証実験で使うコンテナ型データセンターは、六ヶ所村風力開発の変電所敷地内に設置されている。風力発電所が出力した交流2万2000Vを変電所を通じて200Vに変換し、供給を受ける。
風力発電ならではの対応が必要になるのが、電力の契約条件だ。今回は風力発電所の出力した電力のうち、データセンターが供給を受けられる割合に上限が掛かっている。このため、データセンター内で系統電力(商用電源)と組み合わせて、補償しなければならない。2系統の電力をうまく利用してデータセンターを稼働させる技術を検証する。
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