風力発電を大量導入するには、出力変動を吸収する仕組みが必要だ。個別の電力会社がそれぞれ対応するよりも共同で取り組んだ方が、より導入量を増やせる。北海道電力と東北電力は、東京電力が持つ火力発電能力を使って風力発電の大量導入に取り組む。新規導入量は60万kW(600MW)だ。
風力発電にはさまざまな課題がある。中でも風次第で出力(発電量)にムラが生じやすいことが問題視されている。電力の「品質」*1)が悪く、電力需要とは無関係に出力が上下するため必要なときに電力が得られない、余ったときに対応しにくい……。
*1)風力発電の出力が安定しないと、一定の周波数、一定の電圧で系統に供給できない。
発電のムラを吸収する手法として、幾つかの技術が開発されている。風力発電の先進国であるスペインでは、精密な気象観測と予測を基に全国の風力発電所を連携させることで対応している*2)。
*2)スペインは全発電量の約2割を風力発電に頼っている。これはガス火力(コンバインドサイクル)や水力発電、原子力発電などとほぼ同等の規模である。
六ヶ所村二又風力発電所(青森県六ヶ所村)では、出力51MW(34基)の風力発電機を、容量34MW(17基)のNaS(ナトリウム硫黄)電池と組み合わせている。NaS電池は寿命が15年と長く、大容量化しやすいため、発電所と組み合わせる二次電池(蓄電池)として適している。
風力発電と火力発電を組み合わせる手法も優れている。石炭火力を除く火力発電は現在でもピーク需要に応じて稼働するピーク供給力として使われている。風力の出力が上がった場合は、火力を減らし、風力が下がったときは火力を上げればよい。
ただし、火力発電を使う方式にも課題がある。風力発電を増やせば増やすほど、火力発電の調整能力がより必要になり、火力発電を増強しなければならなくなるからだ。このため、風力発電の導入量には限界点(連系可能量)がある。例えば、2008年時点で、北海道電力の連系可能量は31万kW。東北電力の連系可能量は85万kWだ(図1)。
連系可能量を超えて新規に事業者が風力発電所を建設しようとするとどうなるのだろうか。これまでは電力会社が解列条件などを付けていた。解列とは電力需要が低下する時期、すなわち最大連系量よりも低い量しか風力に対応できない時期に、系統の安定性を維持するため、風力発電機を停止することを義務付けるものだ。停止しなければならない時間は、例えば年間の20%にも及ぶ。
これは風力発電の電力を20%捨てていることにも等しく、大変にもったいない。
東北電力は風力発電所と二次電池を組み合わせることで、さらに連系可能量を33万kW増やしたとしている。しかし、同社は2020年度に東北地方全体で風力発電の導入規模200万kWを目指している(図2)。解列や二次電池で対応しようにも量が巨大すぎる。どうすればよいのだろうか。
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