日本風力発電協会が公開した資料によれば、国内の風力発電事業が失速している。同協会によれば、固定価格買い取り制度(FIT)の開始を見込んだ助成制度廃止が原因だ。FITの買い取り価格いかんでは、風力発電の回復が難しい。
日本風力発電協会は2012年1月10日、国内の風力発電導入実績値と今後の導入予測値を発表した。
2011年12月末時点の累積導入量は2501MW(250万1000kW)であり、417の発電所に1832基の風力発電機が導入されている(図1)。2011年度(2012年3月末)の累積導入量を2522MWと予測した。
ただし、2011年単年の新規導入量は166MW(6発電所、78基)と少なく、新規導入量は2010年の66%にとどまる。なぜ導入量が減ったのだろうか。
日本風力発電協会によれば、固定価格買い取り制度(FIT)を早期に開始することを見込み、国が風力発電に対する助成制度を2009年に中止したことが影響したという。このため、2010年の新規の計画が激減した。
従来の制度では国が事業者の初期投資の3分の1を助成する他、地方自治体にも2分の1を助成していた。なお、同制度は最大3年間までの計画に助成するため、2009年に申請し、2010年や2011年に営業運転を開始する風力発電所もある。
国は2010年度の風力発電の規模を300万kWとするという目標をこれまで立てていた。1998年に閣議決定した新エネルギー導入大綱による。2008年に閣議決定した京都議定書目標達成計画では、風力発電の導入量の目標として、下位ケース230万kW、上位ケース300万kWとした。
今回の数値から、1998年に決定した目標は達成できなかったことになる。日本風力発電協会によれば、2013年度に至っても導入量は260万kW程度にとどまるという。2011年7月に開始するFITは、いまだに買い取り価格が公開されていない。買い取り価格が、事業者の予想よりも低ければ、新規の風力発電所はあまり増えないことになる*1)。
*1) なお、風力発電の新規導入量が助成制度の打ち切りによって激減する現象は米国市場で既に起こっている。米国には風力を含む再生可能エネルギーの発電量を発電事業者が申告すると、量に応じて税額を控除する制度(生産税控除:PTC)がある。同制度はこれまで3回(2000年、2002年、2004年)打ち切られたが、そのたびに新規導入量が前年の2割程度まで落ち込んでいた。
次に国内の地域別の導入量と、将来の導入量の可能性を見てみよう。
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