家庭に導入が進むHEMS(Home Energy Management System)の最終目的は、ライフスタイルに合わせた電力の使い方を実現しつつ、需要側で「自動的に」電力消費量を抑えることだ。現在のHEMSはまだまだ初歩的な段階にあるが、実現しやすいこと、難しいことが次第に分かってきた。
家庭の電力管理の未来はどうなるのだろうか。ライフスタイルに合わせて電力をうまく使うことが第一の目的だ。経済的な効率をとことん追求して光熱費を切り詰めたい、「エコ」な電力だけをなるべく使いたい、手間をかけずに簡単に節電したい、冷暖房だけは強めにかけたい、災害に強くしたい……、何を重視するかは家庭によってさまざまだ。
第二の目的は社会全体の消費電力が一時的に限界を超えないよう自動調整することだ。これまでのように発電側だけで調整するのではなく、消費側でも消費電力を自動調整するデマンドレスポンスの実現である。
このような電力管理システムが完成した時点では、電力会社が公表する詳細な「電気予報」の他、時々刻々と変化する電気料金情報を利用できるようになっている。外部からの情報を参照しながら、宅内で動く各種家電の出力を小まめに自動調整する機能も当たり前のように付いているだろう。
その際、天気予報はもちろん、外気温や家庭内外の人間の活動もモニターすることで、短時間の消費予測も可能になっているはずだ。一家が帰宅するまであと30分、さらに食材の買い出しから戻る途中だと分かれば、30分後に消費電力が急増することを予測するのはさほど難しくない。ライフスタイルに合わせ込むために、機器が使う電力のパターンを手動で設定する以上に、普段の活動状況を機器側が自動学習する機能が発達しているだろう。
電力需給のギャップを埋めるのは、節電だけではない。家庭内の太陽光発電システムやリチウムイオン二次電池、燃料電池、電気自動車を管理・制御することで、家庭内、さらに複数の家庭を含む地域が一体となって快適で出費の少ない理想的な電力管理が実現できるだろう。
各社がHEMS(Home Energy Management System)を使って目指す最終的な「絵」はこのような未来予測と大きく異なってはいない。「2012年度は(電力の)創蓄連携システムと今回のHEMSを製品化した。今後、クラウド対応を進め、将来はEV連携(V2H:Vehicle to Home)の他、エネルギー以外の分野、例えばヘルスケア機器、セキュリティとの連携を狙う」(パナソニック代表取締役副社長、エコソリューションズ社社長の長栄周作氏)。
ただし、現時点でいきなりHEMSの完成形を目指そうとすると、複雑で互換性がなく、何よりも高価なシステムができあがってしまう。これでは普及が進まない。そこでメーカーごとに優先順位を設けて進むことになる(図1)。
現時点では社会全体はもちろん、県内、市内でどの程度電力が不足しているのかが分かりにくく、家庭用電力料金も深夜料金などを除けばほぼ固定だ。さらにHEMSが直接管理している宅内を除き、消費側の状況は全く分からない。このため、家庭内で閉じたシステムでも十分に役立つ。
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