トヨタホームはEVや太陽光発電システム、家庭用蓄電池などをHEMSで一括管理できるスマートハウスの販売を始める。購入者は経済産業省の実証実験の一環として4年弱の実験に参加する。一方、パナソニックは実験を飛び越えてスマートタウンの開発に取り組む。
トヨタホームとトヨタすまいるライフは2011年6月3日、太陽光発電やEV(電気自動車)と連動する「スマートハウス」の販売を2011年9月から開始すると発表した。愛知県豊田市に立地する区画面積が200m2前後の14戸を第一期として販売する(図1)。価格は4100万円から。今後合計67区画を販売し、開発面積は合計約1万7000m2に及ぶ。
豊田市は、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証」事業の実証4地域*1)の1つ「『家庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクト」に選ばれているため、購入者は2011年9月から2015年1月までの4年弱の期間、EV(電気自動車)や太陽光発電などの設備を無償で貸与される。
*1)経済産業省の実証実験は2010年度から2014年度末までの5カ年計画である。他の3地域のプロジェクトは、横浜市「横浜スマートシティプロジェクト」、京都府の3自治体「けいはんなエコシティ『次世代エネルギー・社会システム』実証プロジェクト」、北九州市「北九州スマートコミュニティ創造事業」。4地域の実証実験ではいずれも一般住宅やオフィスビルを対象として、太陽光発電や二次電池、電気自動車と充電施設をシステムとして組み合わせた計画になっている。
豊田市のプロジェクトの目的は4つある。家庭内のエネルギー最適化、低炭素交通システムの構築、家庭外におけるエネルギー利用の最適化、生活圏全体での行動最適化である。スマートハウスとEVを組み合わせることで実現する。
具体的には住宅の消費エネルギーの6割以上を自給し、生活や移動に伴うCO2(二酸化炭素)がどの程度削減できるかを確かめる。太陽光発電と燃料電池などで発電した電力を、住宅に設置した蓄電池や電気自動車に蓄えることで、エネルギー需要のピークシフトに役立てる。
実験対象となる電気自動車は豊田市全体で4000台と多い。さらに1戸ごとに閉じたエネルギーの需給バランスを考えるだけでなく、EDMS(Energy Data Management System)を用いて多数の一般住宅のエネルギー需要をとりまとめ、地域全体でのエネルギー利用最適化を試みる。
今回販売する住宅は、EVかPHEV(プラグインハイブリッド車)と組み合わせることでエネルギーの需給バランスを高める。実証実験ではEVなどに充電した電力を家庭側に戻して利用するE2H(EV to Home)なども試みる。
住宅側に無償貸与される施設は以下の通りだ。エネルギーを生み出す設備として太陽光発電システムと、家庭用燃料電池(エネファーム)またはヒートポンプ給湯器(エコキュート)を設置する。電力を消費する機器として専用LED照明と専用エアコン、専用テレビ受像機、スマートフォン、インターネット接続設備がある。電力を制御するためにHEMS(Home Energy Management System)と家電コントローラーを備える。この他、EV/PHEV用充電スタンドを設置する。
実証実験からさらに一歩進み、街を丸ごとスマートハウスで作り上げようという計画も進んでいる。パナソニックの「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」だ。
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