シーメンスのCEOのRoland Busch氏は、世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2025」(ドイツ・ハノーバー)のオープニングセレモニーに登壇し、「AI、専門分野のノウハウ、そしてデータ、これらは勝利の組み合わせだ」と語り、社会が大きく変化する中で産業界に求められる変化および、AI活用の可能性などについて語った。
シーメンスのCEO(最高経営責任者)を務めるRoland Busch(ローランド・ブッシュ)氏は、2025年3月30日(ドイツ時間)、世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2025」(ドイツ・ハノーバー)のオープニングセレモニーに登壇し、「AI(人工知能)、専門分野のノウハウ、そしてデータ、これらは勝利の組み合わせだ」と語り、社会が大きく変化する中で産業界に求められる変化および、AI活用の可能性などについて語った。
ブッシュ氏は冒頭、「世界は現在、劇的なスピードで大きく変化し、われわれは転換点にいる」と説明。地政学的な激変や戦争、そして保護主義の再燃や関税の問題、複雑なサプライチェーンの脆弱性、そして市場全体に破壊的な影響を及ぼす技術革新などが、世界経済の基盤を作り変え、企業や国が成功/成長するための道筋にも変化を及ぼしているとした。
そのうえで「世界のオペレーティングシステム、つまり私たちが慣れ親しんできたシステムは時代遅れになりつつある」と言及。官僚制的な仕組みを減らして機能を発揮しつつ、より迅速なイノベーションを可能とする、新たなオペレーティングシステムの導入が必要な時期が来ていると主張した。
ブッシュ氏は、この実現には企業と政府が足並みをそろえる必要があるとも言及。「ドイツは過剰な官僚主義、厳格な規制、そして増大する電力やモビリティの需要およびデジタル時代に適さないインフラが足かせとなっている。また過去の成功や旧来のビジネスモデルが妨げになっている場合もある」などとドイツを例に挙げて指摘したうえで、今後12年間で国防費やインフラに最大1兆ユーロを投じるというドイツの決定について「新たな始まりの兆しの良いニュースだ」と説明した。
ただし、もちろん投資だけで新たなオペレーティングシステムが実現する訳ではなく、根本的な変化が重要となる。ブッシュ氏は「官僚主義を減らし、規制を大幅かつ迅速に削減し、エネルギー価格を競争力のあるものにし、労働力をより魅力的にし、法人税を下げ、資格のある移民に門戸を開く必要がある。より実用的な自由貿易協定と、真の意味での欧州市場の創出も必要だ。そして、未来のテクノロジーとデジタル化された政府およびビジネスプロセスを推進する必要がある」と説明。「つまり官僚主義を減らし、イノベーションを増やし、それを加速させるのだ」と強調した。
ブッシュ氏は、こうした変革において、テクノロジーとAIが重要な役割を果たすとしつつ、「私たちが既に行っていること全てにAIテクノロジーをただ追加するだけでは、成功しない。必要なのは、AIとデータを中核として製品、ソフトウェア、プロセス、そして会社を再構築することだ」と強調。さらに「数年後には、AIを活用する企業とそうでない企業の間に格差が生じるだろう。私は先日米国でAWS、Google、Microsoft、NVIDIA、Salesforce、Snowflake、Databricksおよび数多くの中小企業やスタートアップ企業の幹部や技術者に会ったが、彼らは皆、バリューチェーン全体で大規模言語モデル(LLM)と生成AIを採用している。ソフトウェアをより速く、より良く開発するため、AIモデルとデータを中心にソフトウェアを完全に再考し始めているのだ」と語った。
ブッシュ氏は「産業向けAIは大きなインパクトを与えるだろう」とし、産業企業のオペレーティングシステムを刷新できる主要3領域として、ビジネスプロセス、製品開発とシミュレーション、そして製造現場の3つを挙げた。
ビジネスプロセスでは、シーメンスは全ての主要LLMを、隔離された環境で従業員が利用可能となっていると説明。機密データをアップロードしプロンプトを実行可能で、半年以内に、プラットフォームの常連ユーザーは8万人になったという。同氏は「当社の事業運営だけでなく、サプライチェーン管理、人事、法務、財務の分野でも、AIによってスピードと効率が向上する」と語った。
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