AiSEGとエアコンの組み合わせからは、未来の電力管理システムの姿が垣間見える。運転開始から30分後に省エネ温度に温度設定を自動で切り替える機能は、これだけでは単純なものだ。だが、白物家電の機能を後からソフトウェアで追加する考え方が興味深い。家電単体の便利な機能をさらに強化し、自動的に快適に動作するように発展できるということだ。ソフトウェア製品では当たり前の考え方だが、ハードウェアそのものともいえる白物家電では目新しい。
外気温データをエアコンからAiSEGが取得し、モニター表示する機能は、これだけでは省エネには役立たないが、将来は他の家電の制御にも使うことで、発展していく余地がある。
ユーザーにとってありがたいシステムは、さまざまな家電のスイッチを自動で入り切りし、外出先から手動でコントロールできるものだろう。
だが、白物家電の機能拡張には思わぬ落とし穴があった。パナソニックはスマートホンを使ってエアコンを遠隔操作する「パナソニックススマートアプリ」を、今回のAiSEGとは別に2012年8月時点で発表している。同アプリとAiSEGを組み合わせると、さらに使い勝手が良くなりそうだ。例えば帰宅直後にエアコンを18度設定にして最大出力でいきなり起動するよりも、帰宅10分前から28度設定で弱運転しておくとしよう。帰宅後の快適さは同じでも、トータルの消費電力量を抑えることができるだろう。
しかし、同社は2012年9月12日に同アプリの仕様を変更し、外出先からエアコンの運転を開始する機能などを削除した*4)。同社は「監督官庁とも協議いたしました結果、電気用品安全法 技術基準への適合に課題があると判断し、同基準へのより確実な適合を図るため」としている。
AiSEGでも外出先からエアコンを制御できるが、操作可能なのはエアコンのオフ操作のみ。運転開始や温度変更機能は技術的には可能だが付けていない。
*4) 「遠隔操作での運転オン」の他、エアコンの「カレンダー予約」「パワーセーブセレクト」「ダブル温度設定」機能を削除した。
HEMSの導入が広がり、外出先からの制御が役立つというコンセンサスが得られれば、同機能が復活する前提が整うだろう。
家電を制御するための手法は、有線、無線を含め数多い。
その中でもECHONET Liteが本命視されている理由は、経済産業省が2011年11月にECHONET LiteをHEMSの標準インタフェース規格として取り上げたことが1つ。さらに、2012年4月から始まったHEMS補助金の補助対象が「補助対象基準(ECHONET-Lite規格の搭載、見える化機能、制御機能等)を満たし、SIIより指定を受けた機器・システム」と定まったことだ*A-1)。
*A-1) SIIとは補助金の執行団体である環境共創イニシアチブをいう。
ここに至る道は長く、1997年に設立されたエコーネットコンソーシアム*A-2)は、物理層からアプリケーション層までをがっちりと固めたECHONET規格1.0を1999年に定めている。現在のバージョンは3.21だが、幅広い機器に採用されているとはいいにくい。
*A-2) シャープやソフトバンクテレコム、東京電力、東芝、NTT、日立製作所、パナソニック、三菱電機など2012年8月時点で49社、9学術団体が加盟する。
では、なぜECHONETをそのまま使うのではなく、ECHONET Liteの策定が新たに必要になったのか。その理由として各種無線通信の急速な普及が挙げられる。ECHONETでは伝送方式として電灯線とツイストペア線、無線(小電力無線)、赤外線などを想定しており、それぞれにプロトコルを定めている。だが、同コンソーシアムがECHONET Liteの開発目的として挙げているホームネットワーク、特にエネルギー利用の効率化を用途とする機器の場合、ECHONETでは実装が大きくなりすぎる。そこで、TCP/IPはもちろんIEEE 802.15.4(ZigBee)などを容易に実装できるよう、OSI参照モデルでいう物理層やMAC層を規定していない「Lite」な規格を策定した。
同コンソーシアムは2011年12月にECHONET Liteを一般公開(PDF)した。
その後の動きは速く、スマートコミュニティアライアンス(JSCA)のスマートハウス標準化検討会は、2012年2月にHEMSなどの標準規格としてECHONET Liteを推奨。経済産業省のお墨付きを得ることにつながった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.