スマートメーター自体は重要ではない、自律制御が肝だCEATEC JAPAN 2011(1/2 ページ)

携帯電話機がつながりやすいかどうかは、基地局をどのように設置するかで決まる。スマートメーターが大量に普及した将来、似たような課題が表面化するだろう。電力需要が急変したときにも対応できる、そんなスマートメーター網を作るにはどうすればよいのか。パナソニック電工によれば、自律制御がカギだという。

» 2011年10月03日 11時00分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 パナソニック電工*1)は2011年9月29日、スマートメーターに関する実証実験を開始したと発表した(図1)。門真市の構内に130基のスマートメーター用通信装置(端末)を分散配置した。通信頻度を上げることで2000基規模のシミュレーションが可能だという。多数のスマートメーターを管理するにはどうすれば効率的なのか、全体のコストを下げるにはどうすればよいのかを実証実験で探る。

*1)2011年10月1日から、パナソニックがパナソニック電工を吸収合併し、パナソニック電工はパナソニックのパワー機器事業部となる。

なぜスマートメーターなのか

 スマートメーターとは通信機能を備えた電力計を指す。現在国内で広く使われている電力計は機械式であり、内部にあるアルミニウムの円板が電磁誘導によって回転している。検針員が定期的に電力計の目盛りを読み取り、課金情報として利用している。

 電力計に通信機能を付ける理由は複数ある。電力会社は自動検針が可能になり、検針コストを下げることができる。月単位以外の課金も可能になる*2)。企業や家庭にとっては電気使用量や電気料金がリアルタイムで分かるメリット(可視化)がある。

*2)一部の国では電気料金を支払わない家庭への給電をスマートメーターを使って停止する用途が進んでいる。

屋外に設置したスマートメーター用通信ユニット 図1 屋外に設置した実験機 スマートメーター用通信装置(端末)を130台配置した。PLC(電力線通信)タイプと、900MHz帯に対応した無線通信タイプがある。出典:パナソニック電工

 さらに企業内、家庭内の機器とスマートメーターを通信回線で結ぶことで、機器ごとのデマンドレスポンス制御が可能になる。例えばピーク電力需要カットに役立つ。電力会社と需要者側の双方にメリットがある。スマートメーターはエネルギー管理システム(EMS)のカギとなる装置だ。家単位のHEMS、ビル単位のBEMSなどさまざまな応用に役立つ。

通信回線に何を使うのか

 実際にスマートメーターを普及させようとしたときの課題の1つが通信回線だ。家屋内とスマートメーターの間の通信、スマートメーターと配電網内のデータ収集装置(親機)の間の通信、それぞれに課題がある。

 ケーブルの配線コスト、敷設コストを引き下げるには、電力供給用の電力線をデータ通信の伝送路として使うPLCや、そもそもケーブルが不要な無線が役立つ。PLCは屋内で、無線は屋内・屋外ともに使える。

 無線を利用する場合にも課題がある。どの周波数帯域を使うかだ。周波数が高いと大量の情報を短時間で送れるが、電波の直進性が高くなってしまい、障害物に弱い。周波数が低い場合は逆になる。国内では総務省が900MHz帯特定省電力無線を2012年にもスマートメーター用に割り当てる計画だ。

スマートメーターのネットワークを作り上げるには

 パナソニック電工はスマートメーター自体ではなく、スマートメーターに内蔵する通信用ユニット(端末)の開発を続けている。実証実験では、PLCタイプと無線タイプの端末を混在して配置した。「マンションなどでは遮蔽物が多く、無線タイプだけでは対応できないと考えている」(パナソニック電工)。

 端末が付いたスマートメーターを大量に配置した場合、各端末と親機の接続関係の設計が極めて重要だ。なぜだろうか。1つの親機に多数の端末を直接接続してしまうと、必要な親機の数が増えてしまうからだ。さらに、マンションの新築やオフィスの新設などで端末が急増したときや、親機が故障したときに対応が難しい。

 そこで、端末にプロセッサを搭載し、端末側で親機との接続関係などを自律制御できるようにした。「ハードウェア処理ではなく、各種のハードウェアに対応可能なソフトウェア処理とした。携帯電話機が搭載するプロセッサ程度の処理性能があれば動作するソフトウェアだ」(同社)。

 このような賢い端末を使うと、どのようなメリットがあるのだろうか。同社は、3つの技術を開発できたという。

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