スマートメーター自体は重要ではない、自律制御が肝だCEATEC JAPAN 2011(2/2 ページ)

» 2011年10月03日 11時00分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
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端末側の自律処理を使った3つの技術を開発

 開発した技術は3つある。「高効率マルチホップ通信技術」と「自律分散型周波数設定技術」「自律分散型端末最適化技術」だ。端末側の自律制御によって、故障に強くなり、親機の処理を平準化できる。親機の数を減らすことができる。

 高効率マルチホップ通信技術では、一般に利用されているマルチホップ通信技術を改良した*3)。マルチホップ通信技術とは、端末と親機を直接接続するのではなく、間に複数の端末を介して親機に接続する技術。親機の数を減らす効果がある。端末と親機の距離を長く取ることができるからだ。「端末と親機の通信距離は300m程度だが、実証実験ではホップ数を7にしており、約2km離れた親機に接続できる」(同社)。

*3)同社は400MHz帯無線やPLCで高効率マルチホップ通信技術の開発を進めており、今回、900MHz無線に適用した。

 マルチホップ技術には欠点もある。途中の端末が故障したり、遮蔽物によって通信ができなくなると、親機に到達できなくなるからだ。これを避けるには健全な経路を親機が常に探索していればよいが、通信量が増えてしまい、処理が重くなる。

 解決策は端末の自律制御だ。前回利用した経路の他に、親機につながる代替ルート情報を端末が覚えておけばよい。通信量は増えず、確実に接続できる。これが高効率マルチホップ通信技術だ。

自律分散制御の例 図2 自律分散制御の内容 2つの技術がある。1つはセル間の干渉を避けるために端末が自律的に周波数をずらす(図左)。もう1つは、各セルに含まれる端末の数を、端末側が自律的に決める(図右)。出典:パナソニック電工

 2番目の技術、自律分散型周波数設定技術は、端末間の干渉を抑える目的で開発した。

 親機は配下に端末を多数従えている。端末群が複数の「セル」を形成している形だ(図2)。セルの端に位置する端末は、隣のセルとの干渉を起こしやすい。干渉を起こす条件は複雑であり、あらかじめ予想しにくい。そこで、親機がセルの範囲を制御するのではなく、自律分散、つまり端末側で干渉が起こらないように、利用する周波数を自動設定する*4)

*4)実証実験で実際に配置した親機は1台である。自律制御のテストはシミュレーションで実行した。今後、親機を複数配置した試験を実行したいという。

 3番目の技術、自律分散型端末最適化技術は、セルに含まれる端末の数を端末側で調整する技術だ。

 ある端末がどのセルに含まれるのか、あらかじめ決めてしまうと、端末が増えたり、特定のセルの処理が重くなったときに対応しにくくなる。そこで、隣接セル間で自律的に親機につながる端末の台数を調整できるようにした。親機側の通信処理量が各セル間で平均化されるように、端末側で自律制御できるのが特長だ。

 「どの程度の時間間隔で自律制御するかは、ユーザーである電力会社の使い方に依存する。実証実験では10秒間隔でセルの状態が変わるように設定している」(同社)。


 パナソニックは、「スマートメータ(次世代電力量計)用通信技術」を10月4日に幕張メッセで開幕する「CEATEC JAPAN 2011」の同社ブースに参考出品する予定だ。


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