太陽光発電システムや蓄電池、エネルギー管理システムを完備したスマートハウスが並ぶ、スマートコミュニティー。パナソニックに続き、東芝が計画を明らかにした。大阪府茨木市にある18ha強のさら地を未来の街に変えていく。
東芝が多数のスマートハウスや公共施設をエネルギーマネジメントシステム(EMS)を使って組み合わせた大規模なスマートコミュニティー事業に本格的に乗り出す。2015年度に同事業で売上高9000億円を目指す。
同社は横浜市やフランスのリヨン市、中国の江西省青城市などでスマートコミュニティーの実証実験を続けている。2011年9月30日には、いよいよ実際の街を建設するために実証実験から一歩踏み出すことを発表した。
大阪府茨木市*1)に位置する旧東芝大阪工場跡地が対象だ。さら地を理想的なスマートコミュニティーに変える「茨木市スマートコミュニティープロジェクト」を立ち上げた*2)。2012年3月までに事業化検討に向けた調査を進める。茨木市や大阪府と協力して、自治体や大学、企業などの有識者を招いた「事業化検討委員会(仮称)」を設立し、検証を進める。
*1)茨木市は大阪府北部に位置する人口28万人弱の都市。名神高速の他、JR西日本の東海道線、阪急電鉄の京都線などが市内を横切り、大阪(梅田)まで20分弱という距離だ。旧東芝大阪工場跡地の周囲は住宅街であり、わずかに畑作地が残る。
*2)京都府と大阪府、兵庫県、京都市と大阪市、神戸市が政府に申請した「関西イノベーション国際戦略総合特区」の対象地域でもある。
「茨木市のスマートコミュニティーの総事業費として、500〜600億円を考えている。早ければ2013年度には着工したい」(東芝)。
建設地点は、茨木市にある隣接した2つの土地だ。「一般住宅だけで数百棟規模になる」(東芝)。2つの土地だけで18万5000m2あり、南北800m、東西500mに達する。このため、周囲の再開発を伴わなくても、スマートコミュニティーが建設できるという。
今回のプロジェクトの対象となる地区には、太陽光発電を標準装備した住宅の他、商業施設や学校、病院、データセンターなどの各種公共施設を誘致したいという(図1)。
事業化検討に向けた調査では、地域内の施設配置や再生可能エネルギーの効率的利用、EMSの設計、コスト計算、ビジネスモデルの仮説検証などを進める。
東芝は既に各種EMSを開発しており、ビル管理用のBEMS、住宅用のHEMS、地域レベルのEMSであるCEMSなどを全て自社で提供できるという。この他、太陽光発電システムや二次電池(SCiB)、スマートメーターや電力のピーク需要を抑えるデマンドレスポンスシステムの他、空調システムや上下水道管理システムなどを社内調達できる。建造物の立ち上げではゼネコンやデベロッパーと協力する予定だ。
スマートコミュニティーを立ち上げる企業は、東芝だけではない。
パナソニックと神奈川県藤沢市は、8社と協力して、パナソニックの藤沢工場跡地(約19ha)に「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」を立ち上げる予定だ。2013年度の開業を予定しており、総事業費は約600億円に上る。
東芝とパナソニックの計画は、構想段階ではよく似ており、日本の東西にほぼ同規模の巨大スマートコミュニティーがほぼ同時期に立ち上がることになる。
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