大量の文書を作成し、保守するには何らかのITシステムが必要だ。デジタルコミュニケーションズによれば、文書の保守で難しいのは差分の管理だという。どうすれば効率的に管理できるのだろうか。
XML(Extensible Markup Language)関連のソフトウェアを開発するデジタルコミュニケーションズは、2013年1月末時点で、同社の「新旧文書比較ソフト」が、大手製薬メーカートップ10のうち、60%以上に採用されたと発表した。
なぜ、製薬業に文書比較ソフトウェアが必要なのか。製薬業に閉じたソフトウェアなのだろうか。
「製薬業や生命保険業では、監督官庁に届け出なければならない書類の種類や数が膨大な量に達している。さらに文書を修正した場合に新旧対照表が義務付けられている」(同社の代表取締役の福重青史氏)。
製造業ではPLMやPDM、BOMを多用している。内部のデータは数値と文字列の組み合わせだ。だが、PDMのように再利用可能な形でまとめられていないテキストは、製造業にも数多い。例えば、開発・設計段階の各種文書や企画書、仕様書、製造マニュアル、取扱説明書だ。全てがPLMで管理されていれば、文書比較ソフトウェアは不要だろう。だが、全ての情報を1ソースで取り扱っているPLMはまだほとんど普及していない。
この他、さまざまな規定を扱った書類や業務マニュアルなども文書比較ソフトウェアの対象になる。
新旧文書比較ソフトはMicrosoft Word(Word)のアドオンとして実装されている。しかし、Wordには校正機能の一部として、そもそも2つの文書を比較する機能が備わっている。なぜ別途ソフトウェアが必要なのだろうか。
それは、Wordの機能だけでは自動化できない部分が残るからだ。Wordは比較時に2つの文書ファイルから変更点を強調した別の文書ファイルを作る。しかし、変更されていない部分を残したまま出力してしまう。さらにどのような変更があったのかも目視で確認しなければならない*1)。何百、何千という文書を扱う際には、目視確認作業では効率が上がらない。
*1) UNIXのdiffコマンドのように2つのテキストファイルの差分を取り出すソフトウェアは広く使われているが、複雑な挿入や削除があった場合に分かりにくく、段落や章といった文書の構造に応じた比較もできない。表や画像の比較も難しい。
新旧文書比較ソフトは、企業内で特定のフォーマットに従って書かれた文書の比較に適している(図1)。2つの文書の違いが、変更なのかそれとも削除や追加なのかをはっきり示すことができるからだ*3)。文書内で段落などの移動があったことも表示できる。
*3) 特定の形式で新旧対照表を出力したい顧客向けにはカスタマイズサービスも提供している。
同社はWordだけではなく、ExcelやPowerPoint、PDFに対応した新旧文書比較ソフトを開発中であり、2013年にはまずPDF向けのソフトウェアの製品化を予定している。
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