デジタルコミュニケーションズは、同社の持つXML文書変換技術を活用した製造業界向けドキュメント変換/活用ソリューションを発表した。情報の標準化・一元管理の布石として高い効果が期待される。
デジタルコミュニケーションズは2011年4月8日、製造業向けドキュメント管理ソリューション「Word2XML2Word 循環利用ソリューション」を発表した。同製品は、PDM/BOMなどの図面管理システムを補完し、ドキュメントデータの再利用性を高めるもの。価格はサーバ1台当たり300万円。
具体的には、同社が持つXMLドキュメント管理技術を駆使し、既存のオフィス製品で作成されたドキュメント類を構造化されたXMLデータに変換、既存のPDMなどのデータベースに統合することで、従来ファイル単位でしか管理できなかった情報を、要素レベルで切り分けて管理できるようになる。また、XMLデータ化したドキュメントは、オフィスソフト用データ形式に再変換したり、HTML形式、EPUB形式への変換も可能となる。また、要素ごとに取り出せるので、新規の製品要件を定義する際には既存ドキュメントの流用も可能となる。
本ソリューションの適用範囲は非常に広範で、例えば部品ごとの検証データや製品企画時の要件定義情報の管理、図面にひも付いた効率のよいマニュアル制作、あるいはサプライチェーン末端の部品メーカーから提出される資料のデータ統合なども可能だ。
PLM、PDMシステムは図面を中心に語られがちだが、広義のPLMにおいて重要とされるのは構想設計やアフターマーケットの情報をいかに循環させるかという点だ。従来の仕組みで活用が不十分だったドキュメント類を統合し、PLMの輪を循環させることの意義は大きい。
「ある半導体メーカーでは、過去のIP(知的財産)情報を参照し、新製品を開発する際の基礎情報として利用しているようです。ここで、素材や図面の解析データ、品質データなどの過去の検証結果を流用できるわけですから、開発初期の構想設計に掛かる工数を半減させることも不可能ではありません」(デジタルコミュニケーションズ 代表取締役 福重青史氏)
PLMの輪を循環させるというニーズの中でも、直近ではややその目的に変化が出てきているそうだ。
「最近では、グローバル設計・製造が当たり前となりつつあるため、図面情報だけでなく、それに付随するさまざまな資料も標準の管理方法で、再利用性の高い状態で管理したいというニーズが増えています」(福重氏)
拠点ごと、サプライヤごとに独自のフォーマットで管理しているような資料類は、連携しにくく、再利用も難しい。このため、類似の資料を各自が作成する必要が出たり、類似資料間で整合性が保てないなど、効率的でない作業が増えてしまう懸念があり、ドキュメントを部品化して統合したいと考える企業が増えているようだ。
福重氏によると「現在もある業界最大手のメーカーなど、複数社と導入を進めているところ」だという。どのように使われるかについては極秘のようだが、アプリケーションに依存したデータ形式からの脱却を目指しているとみてよいだろう。ユーザーとの高い次元のコミュニケーションによる付加価値向上といった展開も考えられる。
「HTML5に対応したWebブラウザが普及すれば、SVG(軽量な画像表現)で図面情報が扱えますし、MathML(数式表現)で工学計算の情報も利用できるようになります。いまあらゆるドキュメントを標準的なXMLデータとして持つことは、今後の可能性を広げることになります。大手メーカーの担当者はこうした情報に非常に敏感に対応している印象です」(福重氏)
福重氏は、既存のPLM/PDMやBOMシステムはそのままに、現在有効に再利用できていない情報を同製品の機能を活用して統合していく使い方を勧めている。
「いまはまず、再利用性を考慮した管理ができていない各種情報をどんどん標準的なXMLデータとして取り込んでいくべきでしょう。グローバルで多種多様な人材が製品開発に携わるようになってくれば、将来的には情報形式の標準化が必要になるときが来ると考えています。いまある情報が一定の基準で構造化されたデータになっていれば、そこから標準化することは難しくないはずです」(福重氏)
同製品は東京ビッグサイトで2011年5月11〜13日に開催されるソフトウェア開発環境展(SODEC)にも出展される予定となっている(東38−23、アンテナハウスとの共同ブース)。
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