実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第16回は、プリント基板を設計するのに必須となったCADツールと、その標準データフォーマット策定の取り組みについて解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2012年7月号の記事を転載しています。
現在、基板設計はCADなしでは考えられません。基板設計CADは高密度な基板を精度良く短期間で設計し、精度の高い製造データを出力するためにはなくてはならない必須のツールです。
昔は専用のコンピュータを使い、高価であったCADもWindowsのPCで走るようになり、価格も安くなりました。このため、CADのない基板設計環境は考えられない状況になりました。すべての基板設計に関る会社ではいくつかのCADをもっていることは当然となっています。「お宅はどのCADを使っているの」は初対面の挨拶にさえなっています。
しかし、企業がCADを運用する上で、大きな問題があります。それはデータの互換性の問題です。現在、多くの会社がCADシステムを開発、商用化しています。ユーザーはCADのコスト、機能、関連会社の運用するCADの機種などの条件からCAD の機種を選んでいます。1社で複数のCAD機種を使用している場合も少なくはありません。CADのデータは機種ごとに異なります。また同じ機種のCADであっても通常は、ソフトのバージョンによってデータが異なります。
1社で複数のCADを運用している場合や、関連会社間で設計情報を共有したり、ICパッケージと基板を一体設計したりしたい場合、伝送線路シミュレータを運用したい場合などは、この異なるCAD機種間でデータの互換性がないことが運用上の大問題となっています。
実はCADの世界でも日本のガラパゴス化が大きな問題となっています。日本国内では国産CADシステムが多く使われていますが、海外ではほとんど実績がありません。
国産CADは細かいアナログ配線設計や、きめ細かい製造用CAM機能がすぐれていました。
しかし、オーディオやビデオなど名人芸的なアートワーク設計がデジタル化によりPCなどと同じデジタル回路設計になりました。
また、製造も海外製造やEMSによる製造のグローバル化により、日本独自の技術よりも、世界的な標準化が必要となってきました。
まだ、アジア諸国では日本との業務の関係で日本のCADを持っていますが、欧米の企業ではほとんど使われていません。
設計が難しい高速LSIやSIMMメモリ(図1)ではユーザーの設計をサポートするために設計例(リファレンスデザイン)を含めたデザインキットがサポートされている場合があります(図2)。多くのデザインキットでは、伝送線路解析のモデルや設計、解析のガイドラインとして、基板の設計データまでが提供されます。ICユーザーであるセットメーカーの製品基板で、このIC周辺の基板設計にリファレンス回路をそのまま使っているものは少なくありません。しかし、このリファレンス設計データの多くは米国のCADデータで提供されています。国産CADしか持っていないと、リファレンス設計データが使えない場合もあります。
ICパッケージの設計には、海外のCADが多く使われています。このため、多くのフォーマットデータの入出力をサポートすることを特徴としてパッケージと基板を一体設計するCADも製品化されています(図3)。
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