電気自動車(EV)ベンチャーのSIM-Driveは、「オートモーティブ ワールド2013」において、PSA Peugeot Citroenの小型車「Citroen DS3(シトロエンDS3)」をベースに開発したコンバージョンEV「DS3 Electrum」を公開した。2011年7月〜2012年1月の約半年間で開発を完了したという。
電気自動車(EV)ベンチャーのSIM-Driveは、「オートモーティブ ワールド2013」(2013年1月16〜18日、東京ビッグサイト)において、PSA Peugeot Citroenの小型車「Citren DS3(シトロエンDS3)」をベースに開発したコンバージョンEV「DS3 Electrum」を公開した。
SIM-Driveといえば、「SIM-LEI」や「SIM-WIL」に代表されるように、車輪の中に走行用モーターを組み込むインホイールモーターと、2次電池パックやインバータなどモーター以外の電動システムを車両の床下のフレーム部に組み込むコンポーネントビルトイン式フレームを採用したEVの開発で知られる。
これに対して、DS3 Electrumは、ベース車のシトロエンDS3のエンジンルーム内部に搭載されているエンジンやトランスミッション、車両後方の底部に設置されている燃料タンクを、モーターやインバータ、リチウムイオン電池パックと置き換えたコンバージョンEVとなっている。SIM-Driveによれば、「SIM-LEIやSIM-WILのインホイールモーターに使用しているダイレクトドライブ型モーターの汎用性と高い効率を確認するために開発した」という。
DS3 Electrumは、左右の前輪に、ドライブシャフトを介してそれぞれダイレクトドライブ型モーターを接続している。減速ギアを用いていないので、高効率の駆動が可能になるという。モーター1個当たりの最高出力は65kW、最大トルクは680Nmなので、EVとしての最高出力は130kW、最大トルクは1360Nm。時速0〜100kmの加速時間は9.8秒である。
エンジンルーム下部のドライブシャフトに組み込んだモーターの上には、パナソニックの18650サイズのリチウムイオン電池セルを用いた電池パックとインバータを設置している。電池パックは、燃料タンクのあった場所にも搭載されている。「エンジンルームにモーターとインバータを組み込んだところ、まだ空きスペースがあったので電池パックを搭載することにした」(SIM-Drive)。電池パックの総容量は17.5kWh、満充電からの走行距離はJC08モードで154kmである。JC08モードにおける交流電力量消費率は113.6Wh/kmとなっており、2012年11月にマイナーチェンジした日産自動車の「リーフ」の114Wh/kmとほぼ同等である。
今回のシトロエンDS3からDS3 ElectrumへのEVコンバージョンで特筆すべきなのが、車室内空間や荷室の容積、安全装備などの基本機能をそのまま維持していることだ。さらに、大容量のリチウムイオン電池パックを搭載しているにもかかわらず、ベース車のシトロエンDS3からの重量増加を95kgに抑えた。
例えば、大手自動車メーカーが開発したベース車のあるEVの場合、三菱自動車の「i-MiEV」が「i」比で200kg、ホンダの「フィットEV」は「フィット」比で330kg、マツダの「デミオEV」は「デミオ」比で180kg、トヨタ自動車の「eQ」は「iQ」比で150kg増加している。
加えて、開発期間の短さも見逃せない。SIM-DriveがDS3 Electrumの開発を始めたのは2011年7月。試作EVの第2号車であるSIM-WILと並行して開発を進め、半年後の2012年1月には公道を走行するためのナンバーを取得している。
短期間で開発できた理由は2つある。1つ目は、EVコンバージョンに用いたモーター、インバータ、電池パックなどを、SIM-WIL向けに開発したものを流用できたことだ。もう1つの理由は、SIM-WILの開発に加わっていたPSA Peugeot Citroenのメンバーから、ベース車のシトロエンDS3に関する知見が得られたことである。
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