自動車の電装部品を動作させるのに必要な電力を発電するオルタネータ。自動車メーカー各社による“燃費戦争”が激化する中で、オルタネータも進化している。今回は、エンジン負荷をできるだけ減らすためのオルタネータ制御技術や、簡易ハイブリッドシステムとしての利用といった最新事例を紹介する。
今の時代に、自動車の販売台数を伸ばすためには、燃費の実力が大きく影響します。自動車メーカーによる“燃費戦争”は激化の一途をたどっていると言っていいでしょう。円高によって最近は感じられにくくなっているものの燃料コストは着実に上昇している上に、景気が良好でない現状では、自動車を購入する際に燃費を重視するのは当然でしょう。
ハイブリッド車(HEV)を代表とするガソリンエンジンだけに頼らないエコカー技術が飛躍的に進化し、10年前では考えられないほどの排気ガスのクリーン化と燃費向上を両立できるようになりました。しかし、ハイブリッド化に伴う車両購入時のコストアップと車室内空間の減少、驚異的ともいえる静粛性によってもたらされる“自動車らしくない”といった感覚的な領域も含めて、HEVの購入をためらう方々が多いことも事実です。
最終的に電気自動車(EV)が本格的に普及する時代が来ると仮定しても、内燃機関を用いた(HEVも含む)自動車との販売比率が入れ替わるにはまだまだ時間が必要です。
つまり内燃機関の高効率化を代表とする燃費向上のための技術開発は終着点に到達したわけではなく、さらなる進化が必要です。そして、現在も技術者達は、必死になって開発を続けています。
自動車の燃費に大きく影響する項目としては、まず車両重量が挙げられます。どれだけ効率の良いエンジンを搭載していても、車両重量が重ければその分だけ燃費を押し下げてしまいます。
最近は高張力鋼板の採用などにより、従来の鋼板よりも少ない重量で同等以上の耐衝撃性を確保できるようになりました。さらに、アルミニウムや樹脂部品の活用幅も広がっており、さまざまな快適装備や安全装置を備えながらも車両重量が軽くなるように工夫されています。
次に挙げられるのは、内燃機関の効率です。現在は電子制御技術が発達していますので、通常運転時に不完全燃焼が生じることはほとんど考えられません。この事実を踏まえて、使用した燃料が内部で完全燃焼していることを大前提とし、そこで生じたエネルギーをそのままタイヤに伝えられるかが重要になってきます。つまり、どれだけ伝達ロスを少なくできるかに注目が集まっているわけです。数ある技術の中でも、分かりやすい例となるのがエンジンオイルの粘度です。
高温高負荷にさらされるエンジン内部を保護するためには、油膜切れを起こさないようにエンジンオイルには一定の粘度が求められます。しかしこの一定の粘度は、エンジン内部構成部品の回転抵抗にもなりますので、燃費向上のためには少しでも粘度を低くしたいというのが本音です。
そこで総合的なエンジン内部負荷低減(ドライブバイワイヤーによるスロットル開度急変の抑制、無段変速機による変速比急変の緩和、ハイブリッド化による実質エンジン負荷の低減など)によって、エンジンオイルの粘度を従来では考えられないほど低減できるようになりました。
0W20といった低粘度オイルはもはや珍しくはなく、今ではそういった規格に当てはまらない超低粘度オイル(無理やり表現すれば0W10や0W5でしょうか)が登場しています。
このように、あらゆる部分から損失を取り除き、それらを積み上げていくことで現在の低燃費技術が成り立っているといっても過言ではありません。中でも、最近になって特に注目されているのがオルタネータの損失低減なのです。
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