激化する“燃費戦争”、発電だけではなくなったオルタネータの役割いまさら聞けない 電装部品入門(4)(2/3 ページ)

» 2013年01月15日 13時37分 公開

「必要最低限の発電」という考え方

 従来までのオルタネータは、常にエンジンによって駆動されながら発電し続けるものでした。電気負荷が一定以上にならない限り、常に鉛バッテリーへ充電電流が流れており、オルタネータは当たり前のようにエンジンに対する抵抗の1つとして存在していたのです。


図1 オルタネータはエンジンによって駆動されている 図1 オルタネータはエンジンによって駆動されている

 オルタネータによってもたらされるエンジンへの抵抗をイメージするには、発電機としての構造はオルタネータと異なるものの、自転車に付いているライト点灯用のダイナモと置き換えてみれば理解しやすいでしょう。

 自転車では、ダイナモを車輪側に倒してライトを点灯させた途端にペダル負荷が大きくなります。夜間にライトを点灯させながら自転車で坂道を上ると大変苦労する羽目に陥ることは、大半の人が経験済みではないでしょうか。これと完全に同じとは言えないものの、オルタネータも間違いなくエンジンにとって負担になります。

 そこで、まずは自動車で使用されている電流量を検知する事で、大ざっぱにオルタネータの発電力を2段階に切り替える(ハイ/ロー)技術が導入されました。他にも、鉛バッテリーの進化による充電受け入れ性能の向上に加えて、アイドリング時のようなエンジン低負荷領域でオルタネータ発電量を抑制する制御技術も導入されています。

 オルタネータによるエンジンへの負荷を低減させる上で、最も重要になるのが「必要な時には発電し、必要がない時には発電しない=必要最低限の発電」という考え方です。

 これを実現するためには、まずバッテリーの充電状況を詳細に把握するとともに、オルタネータを動作させる電流(フィールド電流)を高精度に制御した上で(電子制御技術の進化)、さらに頻繁な充放電を繰り返せるような鉛バッテリーの進化も必要でした。

 最近のトレンドとしては、HEVではない自動車でもアイドリングストップ機構の搭載が当たり前になってきています。これはすなわち、「アイドリングストップ=全く発電していない状態で必要最低限の電装品(灯火類やオーディオ、エアコンなど)を駆動する+再始動時のクランキング電流=バッテリーからの持ち出し電流大=バッテリー負荷が増大」という結果に直結します。

 さらに、アイドリングストップ機構を搭載している車両は、非搭載車両と比べてスタータによるエンジン始動回数が数十倍まで増えます。このため、数年前の鉛バッテリーに求められていた性能とは比べものにならないほど要求は厳しくなっていると言えるでしょう。

 アイドリングストップ機構の登場によって、ますます鉛バッテリーから放電する機会が増えます。これは、もともと高くはない鉛バッテリーの充電受け入れ性能をさらに進化させる必要があることを意味しています。

 この鉛バッテリーの進化については連載の第1回第2回でご紹介しましたので割愛します。しかし、アイドリングストップ機構は刻々と変化する鉛バッテリーの状態によってその動作を行えるかどうかを判断できなければいけません。判断に必須となる鉛バッテリーの状態を把握するためのバッテリーセンサーについて少しだけ触れておきましょう。

図2 バッテリーセンサー 図2 バッテリーセンサー

 バッテリーセンサーは、バッテリーのアースケーブルとバッテリーマイナス端子の間に設置されています。流れている電流値と方向(充電/放電)、電圧、バッテリーの推定温度、バッテリーの内部抵抗(劣化判定に用いる)を検知し、その情報をECU(電子制御ユニット)に送信します。

 電流値と方向はシャント抵抗(分流器)で、電圧はバッテリーセンサーにも印加されているバッテリー電圧、温度はバッテリーセンサー内部にある温度センサー、内部抵抗はバッテリー電圧からそれぞれ演算されています。

 バッテリーセンサーの測定結果は、アイドリングストップ機構を動作させるか否かを判断するだけでなく、オルタネータの発電量を調整するための最も重要な情報にもなっています。

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