日産自動車の新型「シルフィ」は、新開発の排気量1.8l(リットル)のガソリンエンジンを搭載している。エンジン気筒について、内径よりも行程を大きくするロングストローク化などによって燃費を大幅に向上した。
日産自動車は2012年12月5日、中型セダン「シルフィ」の新モデル(以下、新型シルフィ)を発表した。2000年の発売以降使用してきた「ブルーバードシルフィ」という名称からブルーバードを外すとともに、全幅を1760mmまで広げて、5ナンバーから3ナンバーに変更。2012年に新モデルを発表した小型車「ノート」(関連記事)や小型セダン「ラティオ」とともに、同社がグローバルで販売する中核モデルに位置付けている。価格は193万7250〜238万9800円。日本市場での月間販売目標台数は600台。
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既存のブルーバードシルフィのガソリンエンジンは、排気量1.5l(リットル)の「MR15DE」と排気量2.0lの「MR20DE」を搭載していた。新型シルフィは、これらに替えて、新たに開発した排気量1.8lのガソリンエンジン「MRA8DE」を採用。JC08モード燃費は、15.6km/lに向上した。なお、既存のブルーバードシルフィのJC08モード燃費は、MR15DE搭載モデルが15.0km/l、MR20DEが13.4km/lだった。この他、既存の排気量1.8lのガソリンエンジン「MR18DE」を搭載する「ウイングロード」のJC08モード燃費は14.0km/lである。
MRA8DEの改良ポイントは主に5つある。1つ目は、エンジン気筒について、シリンダーボア(内径)よりもピストンストローク(行程)を大きくするロングストローク化である。既存のMR18DEは、内径が84.0mm、行程が81.1mmだった。MRA8DEでは、内径を79.7mmまで狭める一方で、行程を90.1mmに伸ばしてロングストローク化している。
このロングストローク化によって、ピストン速度が向上して燃焼速度が高まり、内径の縮小で火炎伝播(でんぱ)距離も短くなるので、燃焼効率が大幅に向上した。さらに、燃焼室の表面積も小さくなるので、冷却損失も低減できている。
2つ目のポイントは、吸気側と排気側の両方に可変バルブタイミング機構を備える「ツインVTC(Valve Timing Control)」の採用だ。これにより、吸気バルブと排気バルブの開口タイミングを広く重複させられるので、排気ガスをシリンダー内部に逆流させてポンピングロスを低減できるという。
3つ目となるバルブリフター上面のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングと、4つ目となる形状が上方に向かって細くなる軽量のビーハイブバルブスプリングの採用では、摩擦損失の低減を実現している。最後の5つ目は、エンジン回転数が高い領域でも高出力を確保できるパワーバルブの採用となっている。
このMRA8DEに加えて、新型ノートでも採用している副変速機付きのCVT(無段変速機)や空力性能の向上によっても燃費向上の効果が得られているとしている。
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