決勝の競技コースは、タイルの黒線認識を失敗してコースアウトする可能性が高い急カーブが多く、シケインの直後に表面がでこぼこで安定走行が難しいタイルを配置するなど、予選よりも難易度が高くなっている印象だ。
決勝は、予選の下位チームから順に走行した。しかし、フリースケール・カップが、完走さえも容易でないロボットカー競技会であることを観衆に示すように、立命館大学、大阪電気通信大学、函館高専の3チームが連続でコースアウトしてしまった。「予選の後で、直線の走行速度を向上する改良を施した。しかし、安定性が低下したので元に戻したところ、カーブを走った後の黒線認識がうまくいかなくなってしまった」という立命館大学のように、決勝に向けた改良が裏目に働いた事例もあったようだ。
しかし、予選上位3チームの1回目の走行は、タイム差が0.6秒以内に入るデッドヒートとなった。1回目でトップに立ったのは大阪大学で、走行タイムは18秒45である。第2位は0.09秒という僅差の18秒54で、千葉工業大学が入った。予選1位の東京大学は、走行タイムは17秒01と驚きの速さを見せつけたものの、ゴールの直後にコースアウトしてしまったため2秒のペナルティが加わり、19秒01の第3位になった。東京大学は、ゴールラインから3m以内の停車を決勝に向けた課題として挙げていただけに、この結果はかなり悔しかったようだ。
1回目の走行で完走できなかった3チームのうち、2回目の走行で完走できたのは大阪電気通信大学だけだった。走行タイムは22秒68である。予選を好タイムで2回とも完走していた函館高専の大物食いを期待していたが、今回の競技コースではその実力を発揮できなかったようだ。
さて、上位3チームのうち、東京大学に激しいライバル心を見せていたのが大阪大学である。1回目の走行でトップに立ったものの、「ペナルティを除いた走行タイムで東京大学を上回りたかった」ということで、直線で1回目よりも速度が出るように調整して2回目の走行に臨んだ。しかし、カーブでの追従がうまくいかず、18秒56と1回目よりも遅いタイムになってしまった。
一方、走行順が大阪大学の後になる千葉工業大学は、「1回目よりも少し速度を上げた」という調整を行い、18秒41と1回目よりも走行タイムを短縮することに成功した。この時点で、千葉工業大学が暫定でトップに立った。
2回目の走行で最後に登場した東京大学は、千葉工業大学よりも速く走行できるのか。そして何より、ゴールラインの3m以内に停車できるのか。観衆がかたずを飲んで見守る中、素晴らしい速度で走行するロボットカーがゴールラインを過ぎてからきちんと停車した瞬間、大きなどよめきが起こった。走行タイムは17秒36。ゴールラインの3m以内に停車したのでペナルティもなし。千葉工業大学を抜き去り、優勝を果たした。
東京大学のメンバーは、「2013年のチャンピオン大会に向けて、直線でのトップスピードをもっと高めるとともに、さらにコーナーを攻められるようなチューニングを施していく。日本大会では使われなかった、傾斜路やトンネルといったパネルにも対応できるようにしたい」と述べている。
主催のフリースケールは、「2013年は50チーム規模で予選を開催したい」考え。これは2012年の3倍以上になる。大学生と高専生が、組み込みソフトウェアの技術を高めあう場として、今年以上に盛り上がるよう期待したいところだ。
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