日本電業工作とボルボ・テクノロジー・ジャパンは、10kWという大出力のマイクロ波を用いる電気自動車(EV)向けのワイヤレス給電システムを試作したと発表した。Volvo(ボルボ)グループは、電動商用車への採用を検討している。
日本電業工作とボルボ・テクノロジー・ジャパンは2012年7月6日、10kWという大出力のマイクロ波を用いる電気自動車(EV)向けのワイヤレス給電システムを試作したと発表した。ボルボ・テクノロジー・ジャパンの親会社であるVolvo(ボルボ)は、グループ傘下のUDトラックス(旧日産ディーゼル)などが開発中の電動トラックや電動バスなどへの採用を検討している。
このワイヤレス給電システムは、マイクロ波を受信するアンテナと、受信したマイクロ波を電力に変換する整流回路を組み合わせた「レクテナ」と呼ばれるデバイスを使用している。これまでに、日本電業工作が数Wクラスの出力の電波から電力を取り出すために開発したレクテナの変換効率は40%前後だった。今回のシステム向けに新たに開発したレクテナの変換効率は、従来比2倍となる80%を達成した。レクテナの表面積1m2当たりの出力で、3.2kW以上を実現できているという。
10kW出力のマイクロ波を用いたレクテナの変換効率の測定は、京都大学生存圏研究所のマイクロ波送受電実験棟で行った。5kWのマイクロ波を出力可能なパワーアンプを2台使用して、パッチアンテナから新開発のレクテナにマイクロ波を送信し、レクテナの整流回路から出力される電力を計測した。パッチアンテナとレクテナの間の距離が4mのときに、レクテナ変換効率が80%になった。変換効率を向上できた理由としては、「レクテナの回路を小型化して、集積度を高めた」(日本電業工作)ことを挙げている。
今回両社が開発したマイクロ波方式のワイヤレス給電システムは、送電モジュールと受電モジュールの距離が1〜10mほど離れていても、給電効率が大幅に低下しないことを特徴としている。一方、マイクロ波方式以外で電気自動車(EV)向けに開発されているワイヤレス給電システムとしては、電磁誘導方式と磁界共鳴方式が知られている。しかし、既に携帯電話機向けに商用化されている電磁誘導方式(関連記事1)の場合、送電モジュールと受電モジュールに組み込んだコイルの位置が数十cmズレると給電の効率が著しく低下してしまう。トヨタ自動車やIHI、Witricityなどが電気自動車(EV)向けに実用化を進めている磁界共鳴方式(関連記事2)も、送電モジュールと受電モジュールがm単位で距離が離れていると高効率に給電することができない。
このため、送電モジュールと受電モジュールの距離をできるだけ近くに持ってこれるように、送電モジュールを駐車場の地面に設置し、車両の底部に受電モジュールを組み込むというのが一般的な利用法として想定されている。これに対してマイクロ波方式であれば、天井部をはじめ車両のさまざまな場所に受電モジュールを設置できる。
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