電子化が進展する自動車において、ECU(電子制御ユニット)に組み込む車載ソフトウェアの重要性は日に日に増している。これら車載ソフトウェアを効率良く開発するには、ツールの進化が不可欠だ。
電子化が進展している自動車は、ECU(電子制御ユニット)に組み込まれた車載ソフトウェアによって走っていると言っても過言ではない。「人とくるまのテクノロジー展2012」(2012年5月23〜25日、パシフィコ横浜)では、車載ソフトウェア開発用ツールのベンダーも多数出展していた。
ベクター・ジャパンは、車載ネットワーク検証ツール「CANoe」のオプション「CANoe.IP」を使った、車載イーサネットに対応するためのソリューションを展示した。
CANoe.IPは、CANoeを使った検証プロセスにおいて、イーサネットで利用されているIP(インターネットプロトコル)に対応するためのオプション製品である。「CANoe.IPは、診断システムやサラウンドビューなど向けに市場が急拡大しつつある車載イーサネットの検証にも利用できる」(同社)という。従来は、ITS(高度道路交通システム)などで、自動車と車外で双方向通信するIP通信向けを中心に展開していた(関連記事)。
dSPACE Japanは、車載ソフトウェアの標準規格AUTOSARを活用したバーチャルECUのデモンストレーションを行った。
バーチャルECUとは、車載ソフトウェアをハードウェアに実装する前に、ソフトウェアベースで仮想的に試験できる状態にしたもののことである。バーチャルECUを使った試験は、SILS(Software in the Loop Simulation)などとも呼ばれる。
今回のデモは、同社の車載システム設計ツール「SystemDesk」や試験ツール「ControlDesk Next Generation」、試験自動化ツール「AutomationDesk」、シミュレーション環境「Offline Simulator」などを連携させることにより、AUTOSAR準拠の車載ソフトウェアを用いる車載システムのSILSを容易に行えることを示した。「2012年初頭にこれらのツールをアップデートしたことにより、AUTOSAR準拠の車載ソフトウェアによるバーチャルECUの試験が可能になった」(同社)という。
同社は、ECUの繰り返し試験を仮想環境で行うHILS(Hardware in the Loop Simulation)の大手ベンダーである。同社ツールで構築したバーチャルECUの試験環境は、同社のHILSを使ったECUの試験にほぼそのまま使用できる。また、自動車メーカーやティア1サプライヤは、各社が車載ステムを開発する際にノウハウや経験を反映・蓄積させてきたdSPACEのHILSの試験環境を、先述したバーチャルECUの試験に流用することができる。
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は、同社が扱うDRIVVENのエンジンECU向け開発ツールを披露した。DRIVVENは、日本NIのグラフィカル開発環境「LabVIEW」と、計測/制御プラットフォームである「PXI」や「CompactRIO」を活用した製品を展開しており、2010年末には日本NIの親会社であるNational Instrumentsが買収している。
例えばエンジン開発において、燃料噴射方式をPFI(ポートフューエルインジェクション)から直噴に変更する場合などにDRIVVENの製品を使えば、開発期間を大幅に短縮できる。「従来の開発ツールで1週間かかっていたものを、1日間で完了した事例もある」(日本NI)という。
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