【ET2011】組み込みAndroid機器の普及に向けて大きく動き出したOESF組み込みイベントレポート(2/2 ページ)

» 2011年12月08日 11時19分 公開
[安蔵靖志(フリーランスライター),@IT MONOist]
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ステージでは生放送やメンバー企業のプレゼンテーションも実施

 OESFブース内に設けられたステージでは、メンバー企業による製品のプレゼンテーションの他、初の試みとしてUstreamを利用した動画番組「Android Cafe + α」も実施された。同番組は、ET2011の内容やOESFの活動内容を紹介する目的で、ET2011開催前後約2カ月間にわたり実施するというもの(関連リンク)。ET2011開催期間中は、OESFブース内特設ステージからの生中継となった。

 ブース内で展示されていた内容や解説をより深く掘り下げた資料とともにプレゼンテーションが行われていた。

 ウェルインテクノロジー 事業統括部 新規事業課 シニアマネージャーの古賀大吉氏によるプレゼンテーションでは、AndroidやWindowsの苦手なリアルタイム制御をITRONなどのリアルタイムOSと組み合わせることで実現する「マルチOSソリューション」、Androidの移植やドライバ開発などに特化した技術トレーニングを実施する「Androidドライバ基礎」、非接触充電規格「Qi(チー)」に対応するワイヤレス受電モジュールとその実装ノウハウを提供する「モバイルソリューション」という3つの見どころを紹介していた。

oesfoesf 自社ブースの見どころを紹介するウェルインテクノロジー 事業統括部 新規事業課 シニアマネージャーの古賀大吉氏。その模様はUstreamでインターネット生中継された
非接触充電規格「Qi(チー)」に対応するワイヤレス受電モジュールのサンプル 非接触充電規格「Qi(チー)」に対応するワイヤレス受電モジュールのサンプル。実装するノウハウも併せて提供するという

文字認識ソリューションを組み合わせたオムロンソフトウェアのブースにも注目

 その他の注目は、オムロンソフトウェアのブースだ。同社は日本語変換エンジン「iWnn」やOCR(光学式文字読み取り)ソリューション「Mobile OmCR」を提供しており、それらを基にした日本語入力機能や名刺読み取りアプリケーション、外国語の自動翻訳アプリケーションのサンプルなどを展示していた。

オムロンソフトウェアの展示コーナー オムロンソフトウェアの展示コーナー

 名刺読み取りソフト「Bizcaroid」はスマートフォン向けアプリとして既に販売されており、電話帳やスケジュール帳、クラウドサービスなどとの連携も実現している。

スマートフォン向け名刺読み取りソフト「Bizcaroid」の展示 スマートフォン向け名刺読み取りソフト「Bizcaroid」の展示

 タブレットのカメラをレストランのメニューなど外国語の表示部分にかざすだけで、リアルタイムに画像とともに翻訳結果が表示される「リアルタイム翻訳ソリューション」を展示。「Androidアプリケーションの開発を通して、名刺読み取りや翻訳などの応用ソリューションを提供しており、近いうちに商用化してAndroid Marketなりメーカーのプリインストールといった形で展開していきたい」と担当者は語った。

「リアルタイム翻訳ソリューション」の展示 タブレットをメニューに向けると、韓国語メニューが日本語に翻訳される「リアルタイム翻訳ソリューション」の展示

最も大きな成果は「OESFのエコシステムを継続してきたこと」

 2009年2月の結成から約3年近くの歳月が経過したOESFだが、満岡氏が語る「OESFの取り組みが、これまで続いていること自体が成果だ」という言葉が特に印象的だった。

 OESFは一般的な社団法人のように理事などが権限を持って事業を採択するという運営方法ではなく、企業などのメンバーによる「コントリビュート(貢献)」と、それに対して「称賛」する風土になっているのだという。

 自社のビジネスを展開するためのマッチングの場として活用するのではなく(それも一面としてもちろんあるのだが)、Androidをベースにした組み込み製品の発展のために、それぞれ自社が持つ技術やノウハウを提供する。貢献度の高い企業はそれだけOESFの中で大きな存在感を示すことができ、「裏でさまざまなリアルビジネスが動く」と満岡氏は語る。

 OESFが実施しているトレーニングや資格試験はOESFの収入になるが、「OESFの面白いところは、その収入から管理費を除いた利益分を再投資すること」(満岡氏)という。

 ET2011の他、台湾で開催される「COMPUTEX TAIPEI」など、各国の展示会でOESFのブースを確保することで、メンバー企業はその中に出展することができる。通訳や商談ブースなども提供することで、各国でビジネスを展開するきっかけを作るという仕組みだ。

 「Googleと同じ『72時間ルール』というルールを基に、異議がなければ理事会見限で決裁されるというスピード感を保ちながら、自活して自由に進めているというのが重要。こうした仕組みを2年以上運営し続けている」と満岡氏は胸を張った。

 貢献と称賛というスタイルは、いかにもオープンソース的だが、目先の利益を追求することなくコミュニティーに貢献することでビジネスにつながっていく。それがさらなる投資(OESFへの貢献)とリターン(称賛とビジネス)というエコシステムの健全さに、Android組み込み機器の明るい未来が感じられた。

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