三井化学など6社が愛知県に太陽光発電所と風力発電所を併設した国内最大の発電所を立ち上げる。出力は合計56MW。早ければ2013年9月にも完成する見込みだ。2種類の発電所を併設した新しい形の試みとなる。
三井化学や東芝など6社は2011年10月21日、国内最大規模の太陽光・風力発電所を事業化する検討を共同で実施すると発表した。「たはらソーラー・ウインド共同事業」と呼ぶ。
同事業は愛知県の南端、渥美半島に位置する田原市で実施する(図1)。三井化学の所有地(18万m2)に発電能力50MW(5万kW)の太陽光発電所と同6MWの風力発電所を建設し、発電事業を運営する。総事業費は180億円。事業化検討後、2012年6月の着工を目指す(完工は2013年9月)。事業期間は18年間を予定している。
今回の基本合意から、着工まで半年以上間隔が空いているのはなぜだろうか。これはメガソーラーに対する再生可能エネルギー推進特別措置法の買い取り条件(価格と期間)が、現時点では未確定だからだ。「50MW+6MWという発電所の規模は確定しているが、買い取り価格があまりにも低い場合は、事業化しない選択肢もある」(三井化学)。「買い取り条件は2012年1月までに決まると予測している。政府には1kWh当たり40円に近い30円代後半の買い取り条件を期待している」(三井物産)。
参加企業は、東亜合成、東芝、東レ、三井化学、三井造船、三井物産。東亜合成と東レは、材料メーカーであり、発電用部材を担当する。東芝は太陽光発電システムの設計*1、施工、管理を担う。三井化学は土地を提供し、全体のとりまとめを行う。三井造船は風力発電システムの設計、施工、管理を担う。三井物産は6社の中で唯一メガソーラーの運営経験がある*2)。6社で信託会社(たはらソーラー・ウインド共同事業)を設立し、売電利益は配当の形で受け取ることになりそうだ。
*1)業界トップだと主張する同社の変換効率97.7%のパワーコンディショナー(直流交流変換器、容量500kW)を採用する予定。
*2)スペインのカタルーニャ地方にあるメガソーラー(出力1.5MW)を管理する他、子会社の羽田太陽光発電(東京電力と共同で2008年に設立)が、羽田空港国際線地区貨物ターミナルの屋上で発電事業(出力2MW)を続けている。
「今回の計画は1年ほど前から進めており、電力の逆潮流の課題などを検討するため、中部電力の協力を得てきた。現在、中部電力や中部電力のグループ会社の参加を要請中である」(三井化学)。発電した電力は再生可能エネルギー推進特別措置法に基づいて、全量を中部電力に販売する予定だ。
メガソーラーは通常単独で発電所として機能しており、大規模な風力と組み合わせることは少ない。なぜこのような形になったのだろうか(図2)。「利用できる土地が18万m2と広く、日照条件が良いことからメガソーラーの立地として適している。加えて、海沿いの土地にあり、平均風速が国内最高水準である」(三井物産)。高効率発電が期待できるという。1年間で約6万7500MWhの発電を見込み、これは田原市の総世帯の約9割に当たる1万9000世帯の使用電力量に相当するという。二酸化炭素削減量換算では約3万2000トン/年に当たる。
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