関西電力は国内最大のメガソーラー「堺太陽光発電所」(出力10MW)を完成させた。太陽光発電は出力が不安定である。今後は大容量蓄電池を使った出力安定化の試験を始める。
関西電力は2011年9月7日、大阪湾に面したメガソーラー「堺太陽光発電所」(大阪府堺市西区)の全区画の営業運転を開始したと発表した。堺市との共同事業である。
堺太陽光発電所の出力は1万kW(10MW)。2011年8月に東京電力が運転を開始した「浮島太陽光発電所」(川崎市川崎区)の7MWを上回る国内最大のメガソーラーである(図1)。
関西電力は大阪府が所有する産業廃棄物埋め立て処分場(約21ha)を利用して、2009年12月、3期に分かれた太陽光発電所の工事を開始した。2010年10月に第1区画(2850kW)の営業運転を開始後、2011年3月に第2区画(3450kW)、今回、第3区画(3700kW)の営業運転を始めた。
年間発電量は一般家庭3000軒分に相当する約1100万kWhを見込む(図2)*1)。CO2(二酸化炭素)削減量は約4000トン/年である。
*1)なお、関西電力が所有する3つの原子力発電所(11基、合計976.8万kW)のうち、1基の出力は、平均して堺太陽光発電所の約89倍に相当する。
堺太陽光発電所の完成を受け、関西電力は「蓄電池を用いた電力需給システム」の研究を開始する。
なぜ、このような研究が必要なのだろうか。電力会社は系統電力の品質を確保する必要がある。太陽光発電は、1日の間に出力が大きく変動する他、気象条件により細かく出力が変わる。このような電力が系統に流れ込むと、周波数が変化する。つまり品質が低下してしまう。太陽光発電の規模が大きくなればなるほど、品質の低下が目立ち始める。そこへ、蓄電池を「バッファー」として使い、品質維持を試みる*2)。
*2)関西電力は研究の目的を3つ挙げている。「太陽光の大量導入に対応できる需給制御システムの研究」「需給制御用としての蓄電池の適正評価および寿命評価」「太陽光の規模に見合う蓄電池容量の評価」である。
堺太陽光発電所は、石津川変電所(大阪府堺市堺区)を通じて、系統と連携している(図3)。同変電所には約7万kWの負荷(顧客)がある。変電所内に容量約100kWhのニッケル水素二次電池モジュールを置き、2013年度まで検証を続ける。
蓄電システムでは、川崎重工業が開発したニッケル水素二次電池モジュール「ギガセル」の「系統安定化向けモジュール」を48台直列に接続して使う(図4)。電池モジュールと系統は出力250kWのインバーターを介して接続する。
今回の取り組みは、関西電力と日新電機、川崎重工業の3社による研究開発の一貫である。日新電機が制御ソフトウェアの開発評価と電力変換器の作成評価を担当し、川崎重工業が電池管理装置の製作評価、ニッケル水素二次電池の製作評価を進めている。3社は2013年3月まで電力貯蔵装置の研究開発を進める予定だ。2010年10月には3社が容量50kWの「多機能電力貯蔵装置」を開発している。電力ピークシフトと瞬時電圧対策、停電対策に役立つという。
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