太陽電池を大量に集積したメガソーラーの導入が国内でもようやく進み始めた。しかし、住宅や公共機関など屋根上への設置と比べて、規模や設備の性格が大きく異なる。地方自治体が導入を検討する際の資料が欲しい。メガソーラー2拠点の実証実験の結果から、NEDOが導入検討に役立つ手引き書を作り上げた。
1MW(1000kW)以上の出力を備えたメガーソーラー(大規模太陽光発電所)に対する関心が高まっている。「新潟雪国型メガソーラー」(新潟市、容量1MW)や、「都農第2発電所」(宮崎県都農町、容量1MW)など、稼働中の発電所が増えており、2011年8月中旬には「浮島太陽光発電所」(神奈川県川崎市、容量7MW)が営業運転を開始する。35道府県がソフトバンクの孫正義社長の呼びかけに応じて結成したメガソーラー普及を目指す自然エネルギー協議会の動きも記憶に新しい。
住宅の屋根置き用途とは異なり、メガソーラーの設置事例はまだ数少ない。道府県や市町村など地方自治体がメガソーラーを新たに設置する際には、分からないことも多いだろう。立地の前提となる日照量やコストの見積もりはもちろん、環境アセスメントの実施やシステム構成の詳細、施工や建設後の運用など、疑問は尽きない。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光発電に関するさまざまな研究開発や実証実験を支援してきた。例えば2006年から2010年までの5年間の期間でNEDOが委託した研究「大規模電力供給用太陽光発電システム系統安定化等実証研究」では北海道と山梨県の2カ所にメガソーラーを設置、各種データを集めた。
NEDOは2カ所の運用実績に基づき、メガソーラーの設計・施工から検査、運用までの手順やスケジューリングなどに関するノウハウを「大規模太陽光発電システム導入の手引書」として、2011年7月28日に公開した。
165ページからなるPDF版の手引き書は実証実験の報告書ではない。手引き書では、太陽光発電システムを構成する要素の概要や導入の進め方、設計・施工、維持管理、関連法令と諸手続について順に触れており、これからメガソーラー導入を計画する地方自治体やコンサルタントに役立つ内容といえる。
例えば導入の進め方では、立案・企画から始まり、設計、発注・諸手続、施工、自主検査、使用開始、維持管理というフローチャートに従って、それぞれの段階でどのような作業が必要になり、所轄官庁へどのような届け出が必要かを示した。
立案・企画段階では、そもそもなぜメガソーラーを投入するのか、電気料金の節約が目的なのか、非常用電源なのか、CO2(二酸化炭素)排出量削減なのか、遊休スペースの有効利用なのか、見極めが必要と説いている。設計前に必要な日射量の計算では、具体的な計算手法を示した(図1)。
設置コストや発電コストについては2006年度にNEDOが実施した「太陽光発電新技術等フィールドテスト事業」の値を参考値として例示、100〜1500kW級(0.1MW〜5MW)では設置コストの合計が73万円/kWになると示した。
発電コストについても、「発電コスト換算係数」という指標を提示し、金利や修繕・保守費率ごとに発電コスト換算係数を計算できるようにしている(図2)。
1kW当たりの総建設費が70万円であり、金利が4%、修繕保守費率が1%/年の場合、発電コストは、「70÷1.258=56円/kWh」と計算できるという。金利が1%なら、44円/kWhになる。
メガソーラーの設置目的が、CO2削減であっても、そうでなくてもLCA(life cycle assessment)は欠かせない。手引書では太陽電池やシステムの生産から回収再利用までの過程でどの程度環境に対する影響があるかを評価するために、エネルギーペイバックタイムとCO2排出原単位に注目し、分析例を示した(図3)。なお、エネルギーペイバックタイムとは、太陽電池システムの製造から廃棄までに消費したエネルギーを太陽電池の発電で回収するために必要な時間(年)を意味する。
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