面積300haの工業団地内に点在する複数の工場を中核に据え、メガソーラーなどの再生可能エネルギーを工場用のエネルギー管理システム(EMS)と結合する。被災時には地域のエネルギーバックアップとなる計画だ。
トヨタ自動車とグループ会社のセントラル自動車は2011年10月17日、宮城県において、再生可能エネルギーを利用したスマートコミュニティ事業の実現に向けた検討を開始したと発表した。
工場を中核に据えたスマートコミュニティを構築するという点が特色。factory(工場)の頭文字を取り、「F-グリッド構想」と名付けた。
宮城県大衡村(おおひらむら)役場に近い第二仙台北部工業団地(面積308ha)と周辺地域が対象(図1)。大衡村は宮城県の中央内陸部に位置する自治体。工業団地内に立地するセントラル自動車*1)の他、6社、すなわち、サンエイ、三和油脂、すかいらーく、トヨタ紡織東北、ナルセ公研、ビューテックが協力する。
*1)セントラル自動車は、2012年7月に関東自動車、トヨタ東北と統合し、「トヨタ自動車東日本」となる予定。トヨタ自動車によれば、東北地方を中部地方、九州地方に次ぐ、トヨタ第3の国内生産拠点にするためである。
F-グリッド構想では、5つのテーマに取り組む(図2)。工業団地内の未利用地や工場の屋根を利用し、大規模太陽光発電(メガソーラー)などの再生可能エネルギーを利用する。さらにエネルギー管理システム(EMS)を使って省エネルギーに取り組む。将来の電気自動車(EV)普及にも役立つ。
*2)トヨタ自動車は東北復興支援策として、2011年内にセントラル自動車社内に出力8000kW規模の自家発電設備(ガスタービン)を設置すると2011年7月に発表している。この規模の自家発電設備があれば消費電力の9割をカバーできるという。自家発電設備の余剰電力を地域で活用する方向の検討も進めている。
*3)被災時の地域エネルギーバックアップを含む。
トヨタ自動車とセントラル自動車は、経済産業省の「平成23年度スマートコミュニティ構想普及支援事業費補助金」*2)の認可を2011年10月14日に受けた。「今後は、2011年10月18日に検討委員会の第1回の会合を開催し、ワーキンググループを立ち上げ、本格的な検討・事業化可能性調査を進める」(トヨタ自動車)。
*2)同補助金を受ける事業はF-グリッド構想を含めて、全国に48件ある。岩手県、宮城県、福島県など被災地を中心としたプロジェクトは約10件ある。
検討委員会は制度面を中心に議論する。東北大学などの学識経験者や地域産業の関係者、東北電力などの地域エネルギー関係者、区の機関、自治体が参加する。ワーキンググループでは実務者が中心となり、技術面を中心に議論する。
検討委員会とワーキンググループの活動機関は、2011年10月から2012年3月。その後、着工を目指す。
トヨタグループは再生可能エネルギーを利用した新しい家や街について、実証試験を続けており、次第に実運用に入り始めている。
2010年9月には、トヨタ自動車が青森県六ヶ所村において、日立製作所やパナソニック電工、日本風力発電と共同で、「六ヶ所村スマートグリッド実証実験」を開始。風力発電と太陽光発電、スマートハウス、EVを結び付けた実証実験を開始している(関連記事:100%自然エネルギーは可能なのか、六ヶ所村の実験 )。2011年6月には、トヨタホームとトヨタすまいるライフが太陽光発電やEVと連動するスマートハウスの販売を愛知県豊田市で開始している。
大規模な都市の形をとったスマートコミュニティでは、パナソニックと東芝が先行している。パナソニックは神奈川県藤沢市で約19haの「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」を建設する。住宅約1000戸と商業・公共施設を含む。2013年度に開業予定。
東芝は、大阪府茨木市に18haの「茨木市スマートコミュニティー」を建設する。公共施設と数百戸規模の家屋を含むスマートコミュニティを2013年度に着工したいという。
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