ガソリン車がPHV、EVに置き換わっていくと、自動車の社会的な位置付けが変化し、自動車メーカーの戦略も変わる。第1回はPHV、EVが社会システムに貢献するためのエネルギー管理について取り上げ、第2回はユーザーとつながるために必要なソフトウェアサービスについて聞いた。第3回ではHEMS技術の実証実験について何が分かったのかを聞いた。
トヨタ自動車がPHV(プラグインハイブリッド車)やEV(電気自動車)で作り上げようとしている世界には、自動車本体以外にもさまざまな技術開発が必要だ。例えば住宅とEVを組み合わせたエネルギー管理や、EVと充電器を組み合わせた情報管理だ。EV車内ではユーザーとのインタフェース技術が重要になる。2010年6月に東京で開催された「スマートグリッド展2011&次世代自動車産業展2011」では、これらの技術開発の進展を見ることができた。今回は、エネルギー管理技術の実証実験について、何が分かったのか、問題点はどこにあるのかを解説する。
エネルギー管理は、クラウド上に実装する「トヨタスマートセンター」が担う。発電、蓄電設備を備えた住宅にHEMS(Home Energy Management System)を配置し、PHVを組み合わせる。目標は3点ある。スマートハウスを実現し、PHVの運行・充電を管理し、グリッド内の電力を管理することだ。この3点を実現することで、消費電力のピーク値を引き下げ、CO2(二酸化炭素)排出量を最小化できると考えたからだ。
管理ソフトウェアを設計するだけでなく、発電、充電、消費に関する実データを使ったシステムの改善も必要だ。トヨタ自動車はトヨタスマートセンターを公開した約1カ月前の2010年9月から、「六ヶ所村スマートグリッド実証実験」(青森県六ヶ所村、図1)を始めている。日本風力開発や日立製作所、パナソニック電工と共同で、12社の協力を得て、低炭素社会に向けた効率的なエネルギー利用を実証するための実験だ。2012年7月までを予定する。
実証実験では居住者を募り、6棟の住居と8台のEV(プリウスPHV)を組み合わせた。東北電力の系統から切り離した閉鎖型のグリッドであり、電力の売買電は行わない。電力以外のエネルギーを使わないオール電化住宅を用いた*1)。
*1)東日本大震災では津波の被害を受けなかった。周囲の村落が翌日夕方まで停電していたなか、数時間稼働が停止したにとどまった。稼働停止は安全装置の起動による。「オール電化であってもHEMSを導入することで、停電のダメージを減らすことができる」(トヨタ自動車)。
実証実験の要素を図2にまとめた。6棟の住宅にはそれぞれ太陽電池と二次電池が設置されている。住宅と8台のEVを組み合わせることで、なるべく電力の需給をまかなうが、余った場合は上流の模擬配電系統にあるNAS電池(ハブ電池)に電力を蓄え、不足したときはNAS電池から電力の供給を受けるという形だ。
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