すごい! こんなワザやルールがあったんですか? まさしく、ベテラン設計者が教えてくれないワザ、ですね。
そんじゃよぉ、今回の最後は『徹底した設計模倣をすること』を教えてやろうじゃねぇかい! 今晩は、エリカちゃんたちと合コンだから……早く終わらせるぞ。
えっ? それ僕、聞いてない。
身近にある商品で、樹脂箱に多種の小道具を使っている商品を紹介しましょう。図7は、「VTRテープのケース」です。
図中左上の写真は、VTRテープケースから5本のねじを外し、上下のケースに分離した写真です。下方の大きな写真は、上蓋(ふた)ケースです。ケース外側は厚さ1.2mmのHIPS(耐衝撃ポリスチレン樹脂)で成形され、ケース内部のリブは、厚さ0.6〜0.8mmで成形されています。図4で説明した「ルール1:樹脂肉厚のルール」とおりの模範設計といえます。
このリブの入れ方について、図中のX方向とY方向で「断面急変」の探索スキャンを実施してみてください。皆さんの頭の中で、もしくは、スケッチを描きながらで結構です。設置されたリブが、無駄なく理想的な断面急変を回避していることに気が付くと思います。円形のリブは、断面急変を徐々に回避する理想形です。
一方、図中の右上は、ボス周辺に関するリブとフィレット、および、ケースコーナー内側における「隅のR」に注目します。
まず、設計サバイバル大道具である「R」と「リブ」を多方向に設置しています。 同じく、設計サバイバル大道具である「隅のR」も、図5の「隅のRに関する樹脂加工のルール」、つまり、隅のR≧1.5tに準拠し、R3(≧1.5×1.2=1.8)としています。図6に示した「ルール3:リブに関するルール」も含め、総じて、VTRケースは、樹脂部品における低コスト化設計のお手本といえます。
良君! 今回はこれでおしめぇだ。今夜は合コンだから、いまから、シャワーを浴びねえェと。オメェは、さっさと帰れー。分かったら、ハイといえ!
ハイ! 僕も行きまーすっ!
来るなっ! 来るなーっ!!
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では皆さん、第6回で会いましょう(次回に続く)。
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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