今回は「熱カシメ」についての解説。VTRデッキやホッチキス、ゲーム機器を分解しながら、実際に熱カシメの例を見ていこう。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
おい、院卒! 前回のキーワードをいってみろ!
なっ、何ですか、いきなり! いってみますとも。
前回の第6回は実務に役立ちましたか? 「100円自己投資」を実施しましたか? 日本の若き技術者の皆さんには、どうか、韓国や中国の技術者に負けない「モチベーションの向上」をしていただきたいのです。まずは、授業やセミナーは最前列で受けましょう!(以下の図は第3回より)
さて、甚さんの質問に、良君は以下のようにキーワードとキーセンテンスを並べていました。読者の皆さんも、記憶にあるかどうか確認しましょう。
理解度チェック
- ボスの多用
- 各種穴のルール
- スナップフィット
- 戻り返シ
- 嵌(は)め殺し(これは、建築分野でも専門用語)
- スナップフィットと嵌め殺しを使い分ける粋な設計思想
しっかしよぉ、今年の夏は暑かったよなぁ! オメェはいいよなぁ、涼しい部屋で、快適で、そして居眠りして、自爆 注*で、残業して、高給取りってかぁ? あん?
注:「自爆」とは、自らポカミスやケアレスミスでトラブルを出すこと。
甚さん、自爆はありますが、居眠りはないですよ。
そんじゃよぉ、かっこいい3次元CAD使って、まるで、仕事しているフリして。この3次元モデラーめが! あん? 毎日が、お絵書き三昧(ざんまい)だろがぁ。さらに、CAEまでやったフリかい。あん?
そりゃないですよ。真剣勝負で設計してますって。
そんじゃ、VTRテープ買ったか? あん?
ええ、もちろん買いましたとも。
買って、どうした? あん?
えぇとぉ……。
テンメェ。猛暑ボケか? あれほどいったのに。
居眠りはしていませんよ。残業代稼ぎで、別に必要ない個所にCAEを掛けては『暇つぶし』……。これは、バレバレですが。デヘェー。
ねじ不要の設計サバイバル術が続きます。今回紹介する設計サバイバル小道具「熱カシメ」は、最もシンプルなねじ不要の締結法です。熱カシメとは、はんだゴテのようなコテやヒータで加熱し、樹脂部品のピンやボス部を熱変形させてほかの部品と締結をさせる二次加工です。
熱変形といっても、図1に示すように「樹脂を溶かす」と「加熱+加圧」を区別しましょう。
前者は、主に2000〜3000円で購入できるはんだゴテのような「熱カシメ用電気ごて」を使用します。簡易であり、樹脂と樹脂を溶着できますが、締結強度に大きな期待をしてはいけません。
後者は、50万〜200万円の設備である「熱カシメ機」を使用します。「加熱+加圧=塑(そ)性変形」させるので、樹脂と樹脂の締結は不得手ですが、樹脂と金属の締結に適しています。
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