樹脂材料のばね特性を生かした「スナップフィット」で、ねじを不要とする部品の締結法を学ぶ。これが“粋な設計”だぜぃ!
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
べらんめぇーっ!!
ドッ、どうしたんですかぁ? まさか? 朝から吉野家で『牛皿&ビール』? 真のオヤジ三昧(ざんまい)! ……牛皿がなくなれば、キムチもあるし……」
こないだよぉ、西新宿にあるピーナントカという会社でビデオ撮りがあったんだ。ヒゲを生やしたハンサム兄ちゃんと対談したんだけどよ! とにかく、しっかりしてらぁな!
あぁ、『甚さんと芸林の設計サバイバル術大特訓』のビデオ撮りですね!
おお、そうよ! オメェ……見たんだよなぁ? エリカちゃんは、『当然!』といっていたが。
ええ、すごく面白かったです。
さて、ここから本題に入りましょう。第4回では、樹脂設計に関する設計サバイバル術の小道具として、「底抜き」の多用を解説しました。また、前回の第5回では、以下のような、設計側と加工側間における3つの「加工ルール」を紹介しました。
そして、身近にある樹脂部品の例として、優等生である「VTRテープのケース」を分析し、徹底的に「設計模倣」することを推奨しました。以上を事前学習して初めて、設計者が工場見学する意味が出てきます。
ちょ……ちょいと待て! そう、スラスラと先をゆくな! VTRテープのことだがよぉ、ここで、『真の設計者』と造形者の『3次元モデラー』とに分かれるんだよ。
どういうことですか? 甚さん?
VTRテープといえば、いまや1本100円以下だ。それを購入して手に取り、自分でも分解して納得したかどうかなんだ! 金銭でいえば、たった100円だ! オメェはどうだ、正直にいえ!
……実は、購入も分解もしていません……
エリカちゃんは、分解した5社5種の相違をレポートにして送ってきたぞ。しかも、5社のうち2社は海外製品だったぜぃ! 良君、ココなんだ! 高卒、院卒っていっている時代じゃねぇんだよぉ!
筆者は日本、中国、韓国の企業をクライアントに、設計コンサルタントとして生計を立てています。中国、韓国で前述VTRテープケースのセミナーが終了すると、受講者の90%はそれを自費購入し、理解を深めます。
しかし、日本企業の受講者では5%です。たったの5%です。
この技術者のモチベーションの差をどうしたら縮められるのか……、いつも帰国の航空機の中で悩んでいます。
さて、身を引き締めて先へ進めましょう! 今回は、第4回でも取り上げた「ボス」に関するルールから入ります。「ボス」は、樹脂箱において基板取り付けの台座として設ける場合が世の中で多く見受けられます。
第4回では、「底抜き」の多用をお勧めしましたが、実は、図1に示す「ボス」を設ける場合の方が多く見受けられます。
そうです、そうです。これこれ! 僕の持っているソニーのプレイステーションのシールドボックスも、このボスを多用していました。
【抜き勾(こう)配】
図2では、『フィレット』という単語を覚えました。『リブ』とはちょっと違うんですね。米国、中国、台湾、香港、韓国の型屋さんでも通用するといっていました。
よく身の回りの商品を観察しているじゃねぇかい! 感心、感心……では、さっさと次にいくぞ!
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